カプラサービス

「グラリス、ちょっと待ちなさい」
 会議室を出ようとしたグラリスを、ディフォルテが呼び止めた。
「話があるの。あなたはここに残ってもらえるかしら」
 グラリスは戸惑ったような表情を浮かべたが、すぐに「はい」と頷き、もう一度さっきまで座っていた椅子に腰を下ろした。
「それじゃ主任、お先に失礼しまーす」
「はい、今月も頑張ってね」
 他のカプラ嬢たちが、次々とディフォルテに挨拶して、退室していく。
 それを、グラリスは、不安げな眼差しで見送っていた。
 何故、わたし一人だけが残されたのか――
 膝の上に置いた手を、ぎゅっと握る。
 手のひらの中に、薄く汗をかいていた。
 理由は分かっている。
 成績が悪かったのだ。
 ここは、カプラサービス本社内の、第二会議室。
 今日は、月に一度の営業成績発表の日であった。
 各地を担当するカプラ嬢たちの、前月の営業成績が、順位と共に発表されるのである。
 グラリスの成績は、最下位であった。
 もうこれで、三ヶ月連続である。
 順位だけではない。その内容も、お世辞にも良いとは言えないものであった。
 すぐ上の順位、つまり下から二番目のカプラ嬢とでさえ、倍近い差がある。
 最後のカプラ嬢が部屋を出て行く時、ふと目があった。
 哀れむような目であった。
 しかし、同情しているわけではない。
 冷めた目であった。
 可哀想だけど、仕方ないわね――そういう眼差しを残して、そのカプラ嬢はドアを閉めた。
 がらんとした会議室に、グラリスとディフォルテだけが残った。
「さて、と」
 ディフォルテは近くにあった椅子を引き寄せると、その上に腰掛けた。
 木製の、丸椅子である。
 二人は、向かい合う形になった。
 二人の目線が、同じ高さにある。
「どうして残ってもらったのか、分かるわね?」
 グラリスの目をじっと覗き込みながら、ディフォルテが言った。
「……はい」
 グラリスは小さく頷き、視線を落とした。
 ディフォルテは、カプラ嬢たちの中では、一番の古株である。
 本人もまだ現役のカプラ嬢であるが、今では、他のカプラ嬢たちをまとめるリーダーとして、営業主任の肩書きを与えられている。
 先程の成績発表で、順位を読み上げたのも、ディフォルテである。
「グラリス。あなたの最近の成績は、あまり良いとは言えないわ」
 淡々とした口調で、ディフォルテが言った。
「――」
 グラリスは黙ったまま、床を見つめている。
「グラリス」
 ディフォルテが、身を乗り出した。
 ディフォルテの手が、グラリスの顔のあたりに向かって伸びた。
 一瞬、グラリスが、身体を硬くした。
 頬を打たれるかと思ったのだ。
 しかし、ディフォルテの両手は、そっとグラリスの肩に置かれただけだった。
「大丈夫、私は信じてるわ。あなたはまだこんなものじゃないってことを」
 さっきまでとは違う、優しい口調であった。
「先輩……?」
 グラリスが、顔を上げた。
 目の前に、微笑むディフォルテの顔があった。
「ふふ、怒られると思った?」
「い、いえ、そんなことは……」
「確かに私は、成績の上がらない子がいたら、注意しなきゃいけない立場にあるわ。でもね、それだけじゃないの」
「――」
「利益を上げなきゃいけないのは、組織として当然のこと。でも、それよりも、私はここに勤めるみんなに、もっと楽しく働いて欲しいって思ってるの」
「先輩――」
「グラリス、あなた、何か悩んでることがあるんじゃないの? 私でよかったら、何でも話してちょうだい」
「あ……」
 グラリスの口が開きかけ、また閉じられた。
 ディフォルテも、それ以上は、何も言わなかった。
 グラリスの方から、口を開いてくれるのを待つつもりであるらしい。
 グラリスの視線が、再び床に落ちた。
 ぴったりと合わされた膝の上に、左右の手のひらが重ねて置かれている。
 その手が、落ち着かない様子で、そわそわと動いている。
 そんなグラリスを、ディフォルテは、柔らかな微笑みを浮かべたまま、じっと見つめている
 しばらくして、意を決したように、グラリスが口を開いた。
「……わたし、分からないんです」
「分からない?」
 グラリスはこくんと頷いた。
「自分では、精一杯やってるつもりなんです。なのに、お客様はみんな、わたし以外のカプラばかり……」
「――」
「倉庫の管理だって、転送サービスだって、カートのレンタル契約だって、全部ちゃんとやっているつもりなんです。でも、でも……」
「――」
「わたし、もう分かりません。どうしたらお客様にもっと受け入れてもらえるのか」
 グラリスの声が、震えていた。
「先輩、教えてください。わたしに何が足りないんですか?」
 顔を上げたグラリスの目に、光るものがあった。
「……そう、分かったわ」
 そのグラリスの髪を、ディフォルテはそっと撫でた。
「私に任せなさい。きっと、あなたを一流のカプラ嬢にしてみせるわ」
 口元ににっこりと笑みを浮かべて、ディフォルテはそう言った。


 薄暗い部屋であった。
 灯りは、壁に掛けられたランプがいくつかあるだけである。
 窓はなく、出入り口と呼べるものは、鉄製の観音開きの扉が一つきりだ。
 室内の空気は、湿気を多く含んでいるらしく、どこか粘っこく感じられた。
 地下の部屋である。
 以前は、倉庫として使われていた場所である。しかし、カプラサービスが業務を拡大していく中で、倉庫としては手狭になってきたため、今はもう使用されていない。
 がらんとした部屋の中に、古びたガラクタがいくつか転がっている程度である。
「先輩、あの、ここで一体何を……?」
 眼鏡の奥で、グラリスの目が戸惑ったように部屋の中を見渡している。
「グラリス、今からあなたには、特別研修を受けてもらうわ」
「研修?」
「ええ」
 ディフォルテは頷き、扉に向かって声をかけた。
「入ってきて」
 鉄の扉が開き、その向こうから、三人の男たちが姿を現した。
 年齢も、体格もばらばらであった。
 ただ一つ男達の間で共通しているのは、その顔に浮かんだ、下品な笑みであった。
「あ、あの、先輩?」
 不安げな表情を浮かべるグラリスを横目に、ディフォルテは扉の錠を下ろした。
 がちゃん、という重い響きが、閉ざされた部屋の中に反響して消えた。
「なあ、本当にいいのかい? こんな真面目そうな子をやっちまってさ」
 髭面の男が、にやにやと笑みを浮かべながら、ディフォルテにそう訊ねた。
「ええ、構わないわ」
 答えながら、ディフォルテがグラリスに歩み寄る。
 ディフォルテの指先がグラリスの顎に触れた。
「グラリス。あなたに足りないのはね、お客様への奉仕の気持ちよ」
「え……?」
「カプラサービスは、いつも皆様のお側に。この意味が、あなたには分かってないわ」
「そんな、わたしは一生懸命……」
「違うの」
 ディフォルテの指が、くい、とグラリスの顎を持ち上げた。
「あなたの仕事ぶりを調査させてもらったわ。てきぱきと無駄がなく、ミス一つない。でも、それだけじゃダメなのよ」
「――」
「表情が硬いのよ」
「表情……?」
「そう。あなた、心のどこかで、お客様を自分より下に見ているんじゃない?」
「――」
 グラリスは答えなかった。
 違う、と、そう言おうとしたのだが、それは声にはならなかった。
 心のどこかに、ディフォルテの言葉を否定できない自分がいたからである。
「確かにあなたは才能があるわ。新人研修の時も、ダントツの成績だったものね。家柄も良いし、学歴も高い。美貌だってある――」
 ディフォルテの指が、そっとグラリスの頬をなぞってゆく。
「でも、あなたはそれに溺れている。どんなに上辺だけ取り繕っても、お客様はあなたの心の中を敏感に感じているものよ」
「そんな……」
「だから、あなたには一度、どん底にまで落ちてもらうわ」
 その時、グラリスの背後から、太い男の腕が絡みついてきた。
「きゃっ!?」
 突然の出来事に、グラリスは鋭い悲鳴をあげた。
 反射的に、腕を振り解こうともがく。
 それを、ディフォルテが制した。
「ダメよ。この方々をお客様と思いなさい。あなたは、お客様の手を乱暴に振り解くの?」
「そ、それは……」
 グラリスの動きが止まった。
 それを見て、他の男たちも、次々とグラリスの周りに集まっていく。
「さあ、お客様がやってきたわよ。ちゃんとご挨拶なさい」
「は、はい……んっ!」
 ぴくん、とグラリスの体が震えた。
 長身の男の手が、カプラ嬢の制服の上から、グラリスの両胸を鷲掴みにしていた。
「い、いらっしゃいませ、カプラサービスをご利用ですか?」
「ああ、そうだよ。たっぷり利用させてもらうぜ」
 言いながら、男のごつごつした手が、乱暴にグラリスの胸の膨らみを遠慮なく揉んでいく。
「へえ、細身なように見えて、案外ここは肉がついてるじゃねえか」
 男の指が、ぎゅっとグラリスの乳房に食い込んだ。
「やっ……!」
 たまらず体をくねらせる。
「どうしたの? お客様が褒めてくださったのよ。お礼を言いなさい」
 近くの椅子に足を組んで座ったディフォルテが、冷めた声でそう命じる。
「う……は、はい……」
 その間にも、他の二人の男の手が、グラリスの体をざわざわと這い回っていく。
「あ、ありがとうございます……」
 絞り出した声は、震えていた。
 無遠慮に体をまさぐる男たちの手に、たまらない嫌悪感が湧き上がる。
 しかし、男たちはそんなことはお構いなしといった風に、グラリスの体を品定めするように撫で回してゆく。
 サングラスをかけた男の手が、スカート越しにグラリスのお尻を掴み、ぐにぐにと揉む。
 髭面の男は、グラリスの正面にしゃがみこんでいる。無骨な指先が、足首からふくらはぎへと這い上がってゆくのを、グラリスは目を閉じて耐えていた。
 首筋に、生温かいものを感じ、グラリスはぞくりと肩をすくめた。
 後ろから胸を揉んでいた長身の男が、顔を首筋に寄せ、ふっと息を吹きかけたのだ。
 いやな臭いが鼻を突いた。
「ほら、笑顔」
 思わず顔をしかめたグラリスを、ディフォルテがたしなめる。
「は、はい……」
 グラリスは微笑もうとしたが、それはうまく形にならなかった。唇が歪み、頬が引き攣っただけであった。
 足を撫でていた髭面の手が、スカートの中へと潜り込み、太ももの内側へと這い上がってゆく。
「んっ!」
 グラリスの膝が震え、両足がぴったりと合わされる。それで、男の手が太ももの中ほどに挟まれる形となった。
「おい、力抜けよ。それに、これじゃよく見えねえ。自分でスカートめくり上げな」
 髭面がグラリスを睨み上げる。
「グラリス、お客様のご要望よ」
 ディフォルテも冷たくそう命じる。
「は……ぃ」
 諦念に満ちた声で呟き、グラリスはこわばっていた足から力を抜いた。
 スカートの裾を握り、ゆっくりと持ち上げる。
 薄闇の中に、白い脚部が露わになった。
「もっとだよ」
 男が命じる。
 震えるグラリスの両手が、さらに持ち上がり、ヘソから下の、腰から足先までのふくよかなラインが、男たちの視線に晒された。
 淡いピンクの下着をつけていた。
「へへ……」
 髭面は舌なめずりし、再びざわざわとグラリスの内ももを撫で回しはじめた。
 スカート越しに尻を撫でていた長身の男も、今度は、下着越しに、尻を触りはじめた。
 グラリスは、嫌悪感と羞恥心に唇を震わせながら、スカートを持ち上げつづけている。
 その頬が、真っ赤に染まっていた。
 髭面の手が、太ももからさらに上へと移動した。
 両足の付け根に触れた。
「あっ……!」
 グラリスの体が小さく震えた。
 髭面は、薄布越しに、その下の柔肉の形を確かめるように、指先をつぅっと這わせてゆく。
 何度も往復した。
 時折、少し強く指の腹を押し当て、細かく左右に震わせる。
 ぞくり、ぞくりと、グラリスの体が震える。
「どうした? 震えてるぜ」
 長身の男が、後ろから抱きつくようにして、グラリスの襟元から、手を滑り込ませた。
 指先が膨らみの上を伝い、先端の突起を摘む。
 きゅっと捻り上げた。
「んぅっ!」
 グラリスは顎を上げ、小さく声を洩らした。
 その首筋に、男が唇を押し当てる。
 ざらりとした舌の感触が、首筋から耳元へと這い上がっていく。
 しかし、それに意識を集中させることはできなかった。
 髭面の男が、口を大きく開け、かぶりつくようにして下着の上からグラリスの股間を舐め始めたからである。
 じわり、と温かなものが、足の間に広がった。
 男の唾液であった。
 たっぷりと唾液を絡ませた男の舌先が、グラリスの肉の形をなぞるように上下する。
 舌が触れたすぐは生温かいが、舌が別のところへ移動すると、その感覚が今度は冷やっとした温度に変わる。
 唾液に濡れた下着が、ぴったりと肌に張り付いているのだ。
 髭面が、口を離した。
 舌の代わりに、今度は男の視線が、下着の上を這った。
 濡れて張り付いた下着を通して、その下の肉の形が、くっきりと浮かび上がっている。
「たまんねえな、この眺めはよ」
 男が、ふうっと息を吹きかけた。
 濡れた下着が、一瞬、気化熱で冷やされる。
 グラリスの腰が、もぞりと動いた。
 冷えたその後に、今度は、熱が生まれた。
 外からの熱ではなかった。
 体の芯が、うっすらと熱を帯びている。
「は……ぁ」
 肉体の中に生じたその熱を吐き出すように、グラリスの唇から吐息が洩れた。
「なんだ、感じてるのか?」
 髭面がにやにやと笑い顔を浮かべ、グラリスを見上げた。
「えっ、ち、ちがっ……」
「何が違うんだよ。さっきのツラを鏡で見せてやりたかったぜ」
「う……」
 髭面の言葉を必死に否定するように、グラリスはきゅっと唇を噛み締めた。
「その様子だと、処女ってわけじゃねえようだな。どうだ?」
「……」
 グラリスは答えなかった。唇を噛んだまま、男の愛撫に身を委ねている。
「おい、質問にはちゃんと答えろよ。ここにチンポ咥え込んだことがあるかって訊いてんだよ」
 ごつい指先が、ぐうっと布越しにグラリスの中央を押した。
「ふぁっ……!」
 男の指から逃れようとするように、グラリスが身を捩った。しかし、背後から抱きとめられているため、それは快感に悶えるような動きにしかならなかった。
「グラリス、お客様の疑問にはきちんとお答えしなさい」
 髭面とのやり取りを眺めていたディフォルテが、口を開いた。
「ほら、あんたの上司もああ言ってるぜ。どうなんだ、ここにハメられたことあんのか?」
「う……はい、あり……ます」
「ここにぶっといのぶち込まれてよ、ヒイヒイよがったことあんだろ?」
 男の指が、さらに強くグラリスの肉壷を押した。指先が、下着の布地を巻き込みながら、第一関節までグラリスの中に潜り込む。
「んぅっ! は、はいっ……」
「誰にだ? 恋人か?」
 こくん、とグラリスが頷く。
「そいつには今もハメてもらってるのか?」
「いえ、今は……もう」
「別れたのか」
 グラリスが頷く。
「じゃあ今は自分で慰めてんのか」
「え……」
「してるんだろ、オナニー。こんな風によ」
 言いながら、男は半ばまで沈めた指を細かく揺さぶった。グラリスの体が、波打つように悶える。
「ひぁっ……!」
「どうだ? ほら、言えよ」
「んっ……、はぁ……い、してっ……ます」
「週に何回くらいだ?」
「う……そ、それ……は」
「言えねえのか? まさか毎日オナってんじゃねえだろうな」
 グラリスの顔が、かぁあっと朱に染まっていく。それを見て、髭面は口元を歪ませて笑った。
「へ、ビンゴかよ。とんだ淫乱だぜ、いつもお高く止まったグラリスさんは実はオナ狂いのドスケベ女でしたってか!」
 髭面の指がぐちぐちと激しく動いた。
「ひぅっ! あ……あぁっ!」
 グラリスの腰がうねり、唇から喘ぎ声が洩れる。
「お、俺、もうたまんねえ」
 そう言って、サングラスの男が立ち上がった。
 かちゃかちゃという音に、グラリスが振り返る。
「ッ……!」
 すぐに目を逸らした。
 サングラス男のズボンから、隆々と反り返った男根が突き出ていた。
 サングラス男が、身体を寄せてきた。
 硬い肉の先端が、グラリスの腰のあたりに触れた。
 そのまま、肌に擦りつけるように、男が腰をくねらせた。
「いやっ……」
 グラリスは身を捩って、それから逃げようとした。
「グラリス」
 椅子に座ったままのディフォルテが、厳しい口調でグラリスの名前を呼んだ。
「それもお客様よ。きちんとご奉仕しなさい」
「で、でも……」
 戸惑うグラリスの右手が、ぐい、と引かれた。
 指先が熱い温度に触れた。
 握らされていた。
 男のものを包んだグラリスの手の上に、男の手が被さっている。
 グラリスは、諦めたように、目を閉じたまま手を動かしはじめた。
 ぎこちない動きであった。
 それでも、いくらかは快感を覚えたのだろう。
「おう」
 と、サングラス男が声を洩らした。
「こっちも頼むぜ」
 薄く目を開けると、髭面の男もペニスを取り出し、先端をグラリスの方に向けていた。
 もう一度目を閉じ、髭面のものを握る。
 硬かった。
 硬くて、熱い。
 手の甲から二の腕にかけて、粟立つような嫌悪感が走り抜けた。
 それを必死にこたえながら、手のひらで包むようにして、前後に扱く。
「じゃあ俺はここだな――」
 長身の男の両手が、グラリスの両肩にかかった。
 下に押し下げられた。
 どうやら、座れ、ということらしい。
 わけの分らないまま、グラリスはその場に膝をついた。
 目は、閉じたままである。
 一体、男が何をしようとしているのか、それが分からなくて、怖かった。
 しかし、目を開けるのは、もっと怖かった。
 もぞもぞと、すぐ近くで、男が動く気配がした。
 ジイッという、ジッパーを下ろす音――
 何かが顔に触れるのが分った。
 恐る恐る目を開けた。
 グラリスが見たのは、視界いっぱいに広がる、グロテスクな肉の凶器であった。
「ひっ!」
 グラリスは声をあげて、顔を仰け反らせようとした。
 しかし、できなかった。
 長身の男の両手が、グラリスの後頭部を抱えるようにして固定していたためである。
 男は、グラリスの頭部を固定したまま、握ったペニスの先端を、ぐりぐりと唇に押し当ててきた。
「んっ……! んぅ……!」
 硬く口を閉じ、いやいやをするように頭を振る。
「グラリス、何をしているの? 言ったでしょう、それもあなたのお客様なのよ」
 ディフォルテの声が聞こえた。
「ほら、きちんとご挨拶なさい」
「そんな……」
「できないの?」
「……」
 男は、自分のペニスを握ったまま、グラリスがどうするのかを、下卑た笑みを浮かべて見下ろしている。
「……します」
 グラリスは、眼鏡の下に涙を浮かべ、すぐ目の前にある、男のペニスを見つめた。
「いらっしゃいませ、本日はどのようなご用件でしょうか?」
 そうペニスに向かって話し掛けた。
 それを見つめながら、長身の男は、くっくっと笑い声をあげた。
「倉庫をご利用ですか? それとも、位置セーブですか?」
 なおも、グラリスは男のモノに語りかける。
 男が、何か思いついたようであった。
「そうそう、倉庫だ。今日は、預け物があって来たんだよ――」
 男は、握ったペニスを、軽く上下に揺り動かしながら言った。ペニスに向かって話し掛けるグラリスに合わせ、こっちもペニスが喋っているという風にしたいらしい。
「はい、それでは、お預けになる品物を――」
「それがね、こいつはちと、取り出すのが大変なシロモノでね」
「――」
「それで、一つ、あんたに手伝ってもらいたいんだがね」
「と、おっしゃいますと?」
「口を開けてもらえるかい――」
「……分りました」
 言われたとおりに、グラリスが口を開いた。そこに、男のものが、強引に割り込んでいく。
「んんぅっ……ふ!」
「ほら、鼻で息しねぇと窒息するぜ」
 男はグラリスの頭を固定し、腰を突き出した。グラリスの鼻先が、男のごわごわした陰毛の中に隠れる。
「おほぉ……」
 男はぶるりと肩を震わせ、声をあげた。
 そのまま動き出した。
「んっ! んくっ……ぅ!」
 容赦なく口内をかき回すペニスに、グラリスは苦しげな呻き声を洩らした。
「おら、もっと吸いつけよ。舌を使って……おう、そうだ。歯を立てるんじゃねえぞ」
 こみ上げる吐き気に耐えながら、グラリスは言われるままに男のものをしゃぶり始めた。
 先端が、喉の入り口まで届いている。
 口の中に、胃液とも唾液ともつかぬものが溢れるのが分った。
 グラリスの頬を、つう、と涙が伝い落ちた。
「待ってな、もうすぐ特製のべと液を注いでやっからよ」
 自分の台詞がおかしかったのか、長身の男は声をあげて笑った。
 笑いながら、グラリスの頭部を固定し、口の中を犯していく。
「おい、姉ちゃん。こっちもしっかり動かせよ」
 髭面とサングラスが、それぞれのものを握らせたグラリスの手を、上から被せた自分の手で強引に動かした。
 先端から溢れたカウパーが、グラリスの白い指に絡みついていく。
「んっ、んふっ……ぅ!」
 グラリスの唇から、くぐもった呻き声と共に唾液が溢れた。
 しかし、それを拭うことも、今のグラリスにはできなかった。
 溢れた唾液が、顎の先からぽたぽたと床に落ちる。
 苦痛と、屈辱が、グラリスの意識を白く焼いていく。
 大粒の涙が、次々と溢れ、頬を伝っていく。
 しかし、グラリス自身は、自分が泣いていることにも気付いていない。
 ただ耐えていた。
「おほっ、いいぜえ。こんな生真面目そうな娘がよ、三本もチンポ相手にしてるなんてよ」
「ああ、全くだ……ううっ!」
 呻き声をあげて、長身の男がびくんと体を震わせた。
 熱い塊が、グラリスの喉を打った。
 男が、根元まで男根を口内に押し込んだまま、射精したのである。
「ぐっ……! げほっ、うげぇっ……!」
 グラリスの全身が激しく痙攣した。
 仰け反るようにして男のペニスを吐き出し、げほげほと咳き込んだ。
 べちゃっ、
 と音がして、出されたばかりの男の精液が、床に張り付いた。
「おい」
「あーあ」
 なおも体を震わせ、口元からぽたぽたと液体を垂れ流すグラリスを、男たちは白けた様子で眺めている。
 髭面が、グラリスの髪の毛を掴んで、無理矢理顔を上げさせた。
「おい、お客の預けたアイテムを床に放り出すのが、てめえのやり方なのか?」
「え……う」
 グラリスは、泣きながら力なく首を振った。
「どうすんだって言ってんだよ!」
 もう片方の手でグラリスの顎を下から掴み、がくがくと揺さぶる。
「ご、ごめん……なさい」
「謝って済む問題じゃねえだろう、こいつはよ」
「はい、ごめんなさい……」
「ちっ」
 それしか言葉を知らないかのように謝り続けるグラリスの顔を、髭面は舌打ちして放した。
「まあいいじゃねえか。今度は無くさないように、きちんと預けねえとな」
 そう言ったのは、サングラスの男であった。
「今度はこっちに、よ」
 言いながら、スカートの上からグラリスの尻を撫でた。
 髭面の顔に、下品な笑みが浮かんだ。
「それもそうだな――」
 そう言って、髭面は舌なめずりをした。
「おらよ!」
 髭面の手が、グラリスのスカートにかかり、一気に引かれた。
 布の裂ける音がして、下着ごと、スカートが剥ぎ取られていた。
「ひっ……!」
 グラリスが、恐怖に顔を歪ませ、四つんばいのまま、這いずるようにして逃げようとした。
 その上半身が、上から押さえつけられた。
 ディフォルテであった。
「ひ……ぁ、せんぱ……い」
 助けを求めるように、グラリスがディフォルテの顔を見上げた。しかし、ディフォルテは無表情のまま、ゆっくりと首を振っただけであった。
「どこへ行こうというの? あなたはお客様に大変なご迷惑をおかけしたのよ。きちんとお詫びなさい」
「そんっ……な、わたし、もう……」
 がつん、
 と鈍い音がして、グラリスの顔が跳ね上がった。
 ディフォルテが、靴のつま先で、グラリスの顔を蹴り上げたのである。
 容赦の無い蹴りであった。
 ディフォルテが、グラリスの髪を掴み、顔を上げさせた。
 驚いたようなグラリスの頬が、見る間に赤く腫れ上がっていく。
 三人の男たちも、突然の出来事に、放心したように二人を眺めている。
「まだ分らないの? お客様にご奉仕する、それだけがあなたの存在理由なのよ。他には何もない。自分を人間だと思うのはやめなさい。肉穴のついたズタ袋、それがあなたよ」
 顔を寄せ、怯えるグラリスの目を睨みつけながら、ディフォルテは激しい口調で言った。
「あ……あ」
 言葉にならない声が、半開きになったグラリスの唇から洩れた。
 なぜ。
 どうして。
 こんな。
 わたしが。
 痛い。
 助けて。
 いや。
 お願い。
 ゆるして。
 ごめんなさい。
 様々な思考が、ぐるぐるとグラリスの中で渦を巻く。
 しかし、その思考を制御しているのは、グラリスではなかった。
 自分が何を考えているのか。何を感じているのか。分らなかった。自分の思考を、自分でコントロールできない。断片的な思考だけが、勝手に暴走し、頭の中を駆け巡っている。
 頭の中に、太い鉄棒を突っ込まれ、無理矢理かき回されているような気がした。脳味噌が、スープのようにドロドロになり、頭蓋の中で沸騰している。
 その渦が加速し、集中し、極限に達した時。
 ――もう、どうでもいい。
 そう思った。
 もう、何もかもが煩わしかった。
 思考することさえも。
 どうだっていい。
 頭の中が、空っぽになった。
「――さて」
 ディフォルテが、顔を上げた。
 にっこりと微笑んで、男たちを見た。
「どうも申し訳ございません、うちのグラリスが粗相をいたしまして」
 さっきまでの鬼の形相が信じられないような、にこやかな笑みであった。
 あまりの変化に、男たちも戸惑ったように顔を見合わせている。
「さ、グラリス。お客様にお詫びしなさい」
「……はい」
 言われるままに、グラリスは深々と頭を下げた。
「どうも申し訳ございません。お客様から渡された貴重なアイテムを、わたしの不手際で紛失してしまいました」
「あ――ああ、いや、それは」
 長身の男が何か言おうとしたが、それをディフォルテが遮った。
「グラリス、お客様はあなたにもう一度荷物を預けたいそうよ」
「はい」
「ちゃんとお客様がお渡ししやすいようにしなさい」
「はい」
 グラリスは仰向けに寝そべり、脚を広げた。下半身は、さっき髭面によって剥き出しにされている。白い脚の付け根に、黒い茂みが見えた。
「お客様がどこにアイテムを預ければいいか、分りやすいようにお見せしなさい」
「はい」
 グラリスは、膝の裏から手を回し、両手の指先で自らの秘肉を左右に広げた。ピンク色をした肉のつぼみが、ランプの光に照らし出される。
 ぐびり、と男たちが喉を鳴らす音が、薄暗い部屋の中に響いた。
「ご挨拶もきちんとね」
 グラリスは糸の切れた人形のようにカクンと頷き、虚ろな眼差しと乾いた笑みを浮かべて男たちを見つめた。
「いらっしゃいませ、カプラサービスです。どうか私のここに、お客様のべと液をお預けくださいませ」
 扇情的な眺めと言葉に、男たちの目に再び欲望の炎がちらついた。
 露出したまま下を向きかけていた三人の肉棒が、むくむくと反り返っていく。
「……おい、どうする?」
「どうするって、決まってんだろ」
「やるか」
「おう」
 口々に言い合い、三人の男は群がるようにグラリスを取り囲んだ。
 最初は、髭面の男であった。
「よっと」
 髭面は、膝の裏を押し上げるようにしてグラリスの脚を持ち上げると、その間に自分の体を割り込ませた。
 脈打つペニスを握り、上下に肉のクレバスをなぞる。
 先端が、膣口を探り当てた。
 腰を前に押し出すようにして、先端を咥え込ませる。柔らかな肉の襞が、ざわざわと男の亀頭を撫でた。
「ふっ……おほぉ」
 狭い肉の谷間をかき分けるようにして、ずぶずぶと髭面の男根がグラリスの中に沈み込んでいく。
「あっ……あぁあ」
 グラリスの唇が震え、そこから小さな喘ぎ声が洩れた。
 根元まで咥え込ませると、髭面は一度動きを止めた。ぴったりと合わさった腰の間で、二人の陰毛が重なり合い、一つの茂みになっている。
「くっ……こいつはたいした名器だぜ、マルスの足みてぇに吸い付いてきやがる」
 そう言って、髭面は腰を動かしはじめた。
「あっ、あっ、ひぁっ!」
 髭面が腰を突き出すたびに、グラリスの口から声が洩れる。膣内を突き上げる肉棒が、まるで玉突きのように、喘ぎ声を口から溢れさせているかのようであった。
 腰の打ち合わされるパンパンという音と、肉壷をかき回すグチュグチュという音が、一定のリズムで繰り返される。
「ははっ、えらい濡れっぷりじゃねえか。なんだかんだ言ってこいつも興奮してたんだな」
 笑い声をあげて、長身の男が横からグラリスの体を撫でる。
「そりゃそうだろ、乳首なんかこんなに硬くしてよ」
 サングラス男の指先が、激しい突き入れに揺れるグラリスの胸の膨らみの先端を、きゅっと強く摘み上げた。
「ひぁっ……!」
 グラリスが高い声をあげ、びくんと体を震わせた。
「ほおぅ、すげぇ締まったぜ、今」
 はぁはぁと荒い息を吐きながら、髭面が腰を振る。
 触れては離れてを繰り返す腰の間で、男のものを咥え込んだグラリスの女陰が見え隠れしていた。
 幾重にも折り重なった肉の襞が、出入りする男のペニスにあわせて、めくれ上がったり、内側に巻き込まれたりしている。
「つっ……ぅ、やべえ、もうイキそうだ」
 動きを止めずに、髭面が呟いた。
「おい、次は俺だぞ。中に出すなよ」
 乳首を弄っていたサングラス男が、手を止めて髭面に言った。
「ああ、わかってるって……くおおっ!」
 唸るような声をあげて、髭面の動きが激しさを増した。
「ひぁあっ! んっ! んぁあっ!」
「うあっ、イクっ……つぅ、出るっ!」
 叫んで、髭面は腰を引いた。泡立った粘液の絡みついた肉棒が、ずるりとグラリスの中から抜け出る。
「おら、顔こっち向けろ……つぅっ!」
 グラリスの上に覆い被さった髭面の肉棒から、勢いよく白濁液が迸った。
「んっ……!」
 グラリスは目を閉じて、放たれた精液を顔で受け止めた。
 塊のような精液が眼鏡のレンズに張り付き、跡を残しながらゆっくりと伝い落ちていく。
 精液は鼻先にも、頬にも、唇にも飛び散っていた。
「あーあ、ザーメンまみれだぜ」
「ふへへ、いい顔になったじゃねえか」
 髭面は握ったペニスの先端をぐりぐりとグラリスの顔に押し付け、浴びせたばかりのザーメンを塗り広げた。
 ゆっくりと萎んでいくペニスから残滓が溢れ、グラリスの頬を濡らしていく。
「ほら、舐めて綺麗にしな」
「んぅ……はい」
 グラリスは口を開け、力なく俯いた髭面のペニスにぱくんと咥えついた。
「んっ……ふ、れる……」
 亀頭を舌で転がし、絡みついた粘液を舐め取っていく。
「おふ……そうだ、隅々まできっちり綺麗にしろよ」
「はぁふ……はぃ……んむっ、ちゅく……」
 言われるままにしゃぶりつくグラリスを横目に、サングラスの男が立ち上がった。
「じゃあ次は俺の番だな」
 サングラス男は、さっきまで髭面の男がそうしていたのと同じように、グラリスの両足に自分の体を挟ませ、ずぶり、と反り返った肉棒を膣内に突き入れた。
「んくぅっ……ん!」
 髭面のものを咥え込んだまま、唇の端から、グラリスがくぐもった声を洩らす。
「つっ……ぅ」
 絡みついてくる肉襞にぶるりと肩を震わせ、サングラス男はがくがくと腰を揺すりはじめた。
「んっ! んぅっ! んんふ……!」
 精液まみれになった眼鏡の奥で、グラリスの目が涙に潤む。
「おう、どうした? 感じてんだろ? 気持ちいいって言ってみろよ」
 自分のものを口に含ませたまま、髭面が笑い声をあげる。
「ひふっ……ふぁ、きもちっ、いいっ、いぁっ……!」
「くははっ! チンポしゃぶりながら犯されて気持ちいいってか! とんでもねぇエロ女だなぁ、こいつはよ!」
「んぶぅっ……くふっ! う……んふっ!」
「ちくしょう、俺の番はまだかよ。たまんねぇよもう」
 そう言ったのは、最初に精を放った長身の男であった。
 男のものは既に硬度を取り戻し、待ちきれないようにびくびくと脈打っている。
「おっと、じゃあ口使うか?」
 髭面がグラリスの唇からペニスを抜き取り、訊ねた。しかし、長身の男は首を振った。
「そこはさっきやったからよ、今度は別の穴で抜きてえんだよ」
「そうは言うがよ、順番なんだから仕方ねえだろう」
「いい考えがあるぜ」
 はっ、はっ、と息を弾ませながら、グラリスの膣穴を犯しているサングラス男が言った。
「いい考え?」
「ああ……よっ、とぉ」
 サングラス男は自分の足を前方に投げ出し、グラリスの腰を抱き寄せるようにして体を起こさせた。
「あんっ……」
 サングラス男が仰向けに寝そべり、その上にグラリスが跨る形になった。
 形のいいヒップが、髭面と長身の男の眼前に晒された。
「なるほど、そういうことかい」
 そう言って、長身の男は舌なめずりした。
「ちょうどいいや。いっぺんケツでやってみたかったんだ」
 長身の男は、ぺっと手のひらに唾を吐き、それを自分のペニスに塗りたくった。
「ほら、ぼーっとしてねえで、きちんとおねだりしな。もう、自分が何されるかは分ってんだろ?」
「ひぁんっ! はぁっ……い!」
 サングラス男が、下からがつんと腰を突き上げた。
 グラリスは上体を前に倒すと、両手を後ろに回し、尻肉を掴んで左右に開いた。白く柔らかな二つの丘の谷間から、小さくすぼまったアヌスが露わになる。
「お、お客様ぁ、グラリスのお尻の穴……に、おチンポ突っ込んでくださいっ……」
「へっ、聞いたかよ。自分からケツ開いて、ハメて欲しいだとよ」
 くっくっと笑いながら、長身の男は亀頭をグラリスの菊門に押し当てた。そのまま、絡ませた唾液を馴染ませるように、小さく腰を揺する。
「んっ……! ふぁ……ぁっ」
 ぴくん、とグラリスが身悶えし、甘い声を洩らした。
「おい、こっちでセックスしたことあんのか?」
「い、いえ、ない……です」
「ふぅん、そうかい。その割りにゃ、触っただけでいい声が出てんじゃねえか。案外、ここがツボなんじゃねえか?」
 言いながら、男は腰を突き出した。しかし、堅く閉じたグラリスの尻穴は、男のものを飲み込もうとはしなかった。
「ちっ、やっぱすんなりとは入らねえか。おい、もっと力抜けよ」
「は……い」
「んっ……ちっくしょ、まだ無理か」
「違う、違う。力を抜こうとするから上手くいかねえんだ。便所でクソする時みてえにしてみな」
 そう言ったのは、サングラス男であった。
「は、はい、分りました……んっ」
 言われるまま、グラリスはトイレでそうするように、下腹部に意識を集中した。
「はっ……ぁん」
 排泄の時のように、すっと肛門が緩む。
 しかしそこを通過したのは排泄物ではなく、男の硬く反り返ったイチモツであった。
 ずにゅぅ、と狭い肉の穴を潜り抜けて、長身の男のペニスが、グラリスの腸内に潜り込む。
「ひぅっ……あぁあああっ!」
 今まで体験したことのない感触。外から内へとアヌスを擦り上げて侵入してくるペニスに、グラリスはあられもない叫び声をあげた。
「おっ……ほぉ、入ったぜえ」
 根元まで沈め、長身の男はぶるりと肩を震わせた。
「ふぅ……入っちまうもんなんだなぁ、あんな狭い穴によ」
 そう言って笑い、自らのものを咥え込んだグラリスの尻穴を見下ろす。
「ははっ、すっげえ。こんなに広がって、裂けちまうんじゃねえのか?」
「ひっ……ぁ、あふぁっ……ぁ」
「おい、どうだ? 尻穴にチンポ咥え込んだ気分はよ」
 長身の男は、グラリスの背中にのしかかるようにして、耳元で囁いた。
「はぁあっ……あ、あぁ……!」
 グラリスは口をぱくぱくさせながら、意味の分からない喘ぎ声をあげている。
「ふへへ、言葉にならねえくらい感動してるってか。よし、動くぜ……くぅっ!」
 長身の男が、ゆっくりと腰を前後に振りはじめた。めくれ上がったアヌスが、出入りするペニスにあわせてヒクヒクと震える。
「ひぁあんっ! んぁっ! あぁぅ!」
「くふぅ……さすがにこっちはすげえ締め付けだな、さっき口で抜いてなきゃすぐにイッちまうとこだ」
 言いながら、背中から腕を回して両胸を鷲掴みにする。
 力任せにこねあげた。
「ひぐっ! あ、あ、あ!」
「よし、こっちも動くぜ……」
 サングラスの男が、下から腰を突き上げて、グラリスの膣穴をかき混ぜた。
 二人のペニスが、肉の隔壁越しに、グラリスの中で擦れあう。
「んぁあう! っく、ひぁ、あぁんっ!」
「はっ、はぁっ、どうだ、チンポ中でぶつかってるの分るか?」
「あぁあ、あふ、ひぁ、ひぁっ!」
「クソ、訳分らねぇ言葉ばかり吐きやがって。おいコラ、ちゃんと返事しやがれ」
 がつがつと抉るように腰を突き入れながら、長身がグラリスに言う。
「はぁっ、はぁい、分りますっ! んぁあう!」
「おう、まだ喋れんじゃねえかよ。どうだ、痛いか?」
「い、いえ、痛くないっ、です、ふぁあっ!」
「へえ。もしかして感じてんのか?」
「はい、気持ちいい……あぁっ! いいですぅ!」
 精液まみれの顔を仰け反らせて、グラリスは叫んだ。
「なんだ、もうケツで感じてんのか。素質あるぜ、肉奴隷のな」
「んはぁぅ! はぃ、ありがとうございますっ……あぁあ!」
「見なよ、自分で腰振ってるぜ。とんでもねえ淫乱だな。自分で言ってみろよ、私はチンポ二本挿しされて悦ぶどうしようもない変態のド淫乱ですってな」
「はっ、はぃい、わたしっ……おちんちん二本挿しされてっ……悦ぶ、どうしようもない……変態のぉ、ド淫乱っ……ですぅ!」
 男たちは声を上げて笑った。
「はは、ホントに言いやがったぜ、こいつ!」
「信じらんねえ、マジか!?」
 髭面が立ち上がり、二人の男に上下から犯されながら腰を振りつづけるグラリスの前に、反り返った自分のものを差し出した。
「おらよ、チンポはもう一本あるんだ。嬉しいだろ?」
「は……い、嬉しいですぅ、おちんちん三本もあって嬉しいですぅ」
「よおし、じゃあ好きなだけしゃぶりな」
「はいっ……んふ、ちゅぷ……んんぅっ!」
 グラリスは髭面のペニスに咥えつき、音を立てて舌を使いはじめた。
「へへっ、随分と素直になったじゃねえか……おう、そうだ、そこ、カリの裏……おおう」
「んむっ……んくぅ、はぁふ……んんっ!」
 溢れた唾液をぽたぽたと唇からこぼしながら、グラリスが狂ったように髭面のものを舐め回していく。
 既に、上着も剥ぎ取られていた。白い裸体を晒しながら、淫猥なダンスを踊るように腰を振る。胸の膨らみが上下に揺れ、つんと尖った乳首を男たちの手が摘み、こね、捻り上げる。
 薄暗い部屋の中に、グラリスの中を出入りする三本のペニスが、グチュグチュと淫らな音を響かせ、獣のような荒々しい吐息がそこに混じる。
「くっ……おお、いくぜ、出すっ、おら、中に出すぞっ!」
「んふぅっ……はふぁ、はぁい、んんぅうっ!」
「おっ……おぉおおっ!」
 下になっていたサングラスの男が、声をあげてグラリスの膣内に射精した。垂直に弾けとんだ精液が子宮を突き上げ、グラリスの体がびくんと大きく跳ねる。
「俺もっ、くぅ、イクっ……おああ!」
「うああ、俺もだ……つぅうっ!」
 次々と、男たちがグラリスに精を放っていく。しかし、男たちの底知れぬ欲望は、一度や二度で終わるものではなかった。
「じゃあ、次は俺がこっちだな」
「俺はここだ」
 体位を変え、配置を変えながら、何度もグラリスの穴という穴を犯していく。
「ははっ、まだ締め付けてくるぜ。タフな女だ」
「そうでなくちゃな。おっ……ほぉ、またっ……出るっ!」
 次々と吐き出される男たちの欲望の雫を、グラリスは夢の中を泳ぐような虚ろな眼差しに、引き攣ったような歪な笑みを浮かべながら、余すところなく全てその肉体で受け止めていった。
 ディフォルテは椅子の上で足を組み、柔らかな微笑みを口元に浮かべ、目の前で繰り広げられる狂宴を眺めていた。
「上出来ね」
 そう呟いたディフォルテの声は、グラリスを犯し続ける三人の男にも、そしてグラリスにも、届くことはなかった。




  epilogue




「あ、俺、ちょっとカプラ寄ってくわ。悪いけど、先行っててくれ」
「またかよ? つーかさ、カプラならダンジョンの前にいるじゃねーか」
「あれ、お前知らなかったっけ?」
「知らなかったっけって、何をだよ?」
「あそこのカプラはさぁ、他と違うんだよ」
「違う? 何がだよ」
「うーん、まあ、口で説明するより実際に体験してみるのが一番かな」
「お、おい、どこ連れてくんだよ? 俺はこれから狩りに……」
「いいから、いいから。お前も来てみろって」


「いらっしゃいませ、カプラサービスです。本日はどのようなご用件でしょうか?」
「いや、用件は別にねえんだけど。無理矢理連れてこられただけで……って、ええ!?」
 驚きに見開かれた男の目の前で、そのカプラ嬢はゆっくりとスカートをめくり上げた。
 陽光の下にさらけ出された白い肌には、下着の類は何一つ見当たらなかった。足の付け根の黒い茂みが、何かの冗談のように風にそよいでいる。
「あ、あの、これ、一体?」
 戸惑う男に、そのカプラ嬢はにっこりと微笑み、言った。
「お口でも、あそこでも、アナルでも、お好きなところをお選びください」
 それは、一見何の変哲もない微笑であった。
 もしも男がもっと注意深く観察していたのならば、その微笑が、どこか奇妙な違和感に満ちていたとに、おそらく気が付いただろう。
 だが、眼前の裸体に気を取られていた男は、それに気が付かなかった。
 案内してきた男も、同様であった。
「そ、それって……その、して、いいってこと?」
 ごくり、と唾を飲み込みながら、男はそう訊ねた。男の股間が膨らみ、ズボンの前がぱんぱんに張っている。
「ええ。カプラサービスは、いつも皆様のお側にいるんですわ」