ガール・ドント・クライ


 
 おや。
 どうしたんだい、これは。
 なんだか、人がたくさんいるね。
 はは。
 ちょっぴり、緊張しちゃうね。
 子供の頃はね。
 みんなの前で、話をするというのが、とても苦手だった。
 それを、思い出しちゃうな。
 うん?
 ぼくの名前を呼んだのは、誰だい。
 ああ。
 君か。
 君の顔は、何度も、見たことがあるね。
 そうか。
 わかった。
 君は、ぼくの、後輩なんだろう。
 だから、いつも、ぼくに、プロデュースについて、話を聞きに来るんだね。
 いいよ。
 いくらでも、相談に乗るよ。
 なにしろ、ぼくは、君の先輩だからね。
 君が、765プロに入社して、どれくらい経ったのかな。
 プロデューサーの仕事というのも、これはこれで、大変なんだっていうことが、そろそろ、身にしみて分かってきた頃だと思うからね。
 どうだい。
 悩みなんかも、いくつも、出てきたんじゃないかな。
 はは。
 そりゃあ、もちろん、わかるよ。
 ぼくだって、そうだったからね。
 同じだよ。
 ぼくはね。
 自分の担当のアイドルのことを、本当にすてきな女の子だと思っているんだ。
 本当に、心からね。
 どうかな。
 君は、こんな風に考えてみたことは、あるかい。
 プロデューサーというのは、そのアイドルの、一人目のファンなんだよ。
 うん。
 まだデビューする、その前から、ぼくたちは、彼女に出会ったんだからね。
 これから、何千、何万という人たちが、その子のことを知って、その子のことを好きになっていく、その最初の一人が、ぼくたち、プロデューサーなんだよ。
 はは。
 ちょっと、気取りすぎかな。
 でも、それくらい、ぼくは彼女に惚れ込んでしまったんだよ。
 うん。
 ひと目見た時からね。
 彼女、高槻やよいというんだけれどね。
 はは。
 知ってるか。
 そりゃあ、君は、ここの社員だからね。
 いまさら、言うまでもないことなんだけどね。
 うん。
 まあ、世間的にはね。
 多分、違う名前の方が、通りがいいんだろうと思うよ。
 でも、それは、芸名だからね。
 普段は、やよい、って呼んでるかな。
 うん。
 社長なんかは、やよい君と、そう呼んでるね。
 どうだい。
 君は、自分の担当アイドルを、なんて呼んでるのかな。
 うん?
 そうか。
 言えないか。
 はは。
 恥ずかしいのは、分かるけどね。
 ええと。
 何の話だったかな。
 ああ。
 そうだ。
 ぼくが、やよいの、一人目のファンだっていう、そのことまでは、話したよね。
 うん。
 そうだよ。
 ぼくは、それだけ、やよいに惹かれていたんだよ。
 それが、プロデュースの、第一歩だからね。
 彼女の魅力を、もっとたくさんの人に知って欲しい、そう思うことが、プロデュースをしていく、その原動力になるんだからね。
 君だって、そうだろう?
 はは。
 そりゃね。
 ぼくだって、辛いことは、何度もあったけどね。
 でも、本当に、頑張ったよ。
 やよいのことが、大好きだったからね。
 プロデュースというのは、もしかしたら、彼女のことが好きだっていう、その気持ちを、みんなに広めてゆくことなのかもしれないね。
 うん。
 おかげさまでね。
 順調に、ファンは増えていったよ。
 やよいも、よく頑張ったからね。
 ライブなんかもね。
 最初は、全然、お客さんが入らなくてね。
 信じられるかな。
 今でこそ、やよいも、トップアイドルとして、認められているけどね。
 ステージで、曲が流れ始めたときに、片手で数えられるくらいしか、客席に人がいなかったことも、あったんだよ。
 それでも、やよいは、一生懸命、歌ったよ。
 健気にね。
 アイドルとして、笑顔と元気がいっぱいのステージを、届けるためにね。
 ぼくは、それを、舞台袖で見てた。
 悔しかったな。
 ほんとうに、悔しくて、その日は、ずっと、眠れなかった。
 目を閉じるとね。
 浮かんでくるんだよ。
 やよいの姿がね。
 ほとんど、誰もいない、無人に近い観客席に向かって、それでも、はじけるような眩しい笑顔で、力いっぱいに踊りながら、ありったけの元気をこめて歌う、やよいの姿がね。
 うん。
 そうだよ。
 やよいは、ずっと、笑顔だったんだ。
 はじめから、最後まで、ずっとね。
 横で見ているだけのぼくなんかよりも、ステージで歌っているやよいの方が、もっと、ずっと、辛かったはずなのにね。
 きっとさ。
 やよいも、泣いてたんだと思うよ。
 顔では、笑っててもね。
 心の中ではね。
 ステージが終わってからね。
 控え室の前で、やよいが着替えて出てくるのを、待ってる時にね。
 聞こえてきたんだ。
 泣き声がね。
 すすり泣くような、そんな声だった。
 ぼくは、どうしていいか分からず、ドアの前で、ただ、立ち尽くしていた。
 どれくらい、そうしてたっけ。
 ドアを開けて出てきたやよいは、やっぱり笑顔でね。
 元気いっぱいに、ぼくに、お疲れ様ですって、そう言ったんだよ。
 泣いていた跡なんかは、ちっとも見せないでね。
 すごい子だよね。
 苦しいこと、辛いこと、いっぱいあるはずなのに、小さな体の中に、みいんな、押し込めてね。
 ほんとうに、すごいと思った。
 でも、そう思うと同時にね。
 これ以上、もう、そんなことはしてほしくないって、ぼくは、そう思ったんだ。
 さっきね。
 悔しくて眠れなかったって、ぼくは言ったけどね。
 ぼくは、客が入らなかったこと、それ自体が、悔しかったわけじゃないんだ。
 もちろん、そりゃあ、プロデューサーの仕事というのは、ビジネスだからね。
 客が入らないと、困るっていうのは、当然だよ。
 そこに、ぼくらの生活だって、かかってるわけだからね。
 でもね。
 そんなことは、些細なことなんだ。
 そんなこと以上に、ぼくは、やよいにそんな辛い思いをさせてしまった、そのことが、悔しくてたまらなかったんだ。
 それに気がついた、その時に、ぼくは、誓ったんだ。
 やよいを、かならず、トップアイドルにしてみせるんだってね。
 そりゃあ、もちろん、プロデュースをはじめた時にだって、その気持ちはあったんだけれどね。
 うーん。
 なんと言えばいいのかな。
 君だって、自分のプロデュースしている娘を、トップアイドルにしてあげたいと、そう思っているだろう?
 うん。
 それは、当然のことさ。
 でもね。
 それはまだ、言葉だけのことなんだよ。
 誓うっていうのはね。
 もっとこう、心の底から、真摯に、そう思うということなんだ。
 それからは、もう、がむしゃらに突っ走ったよ。
 死ぬ気でね。
 やよいのためにね。
 他には、何もいらないと、本気で、そう思ったよ。
 やよいを、トップアイドルにするためなら、どんなことだってできた。
 テレビ局の担当者に、土下座をして、やよいを出演させてほしいって、頼み込んだこともあったっけ。
 はは。
 あの時は、本当に、無我夢中だったからね。
 自分のことなんかは、どうだってよかった。
 何日も、ぶっ続けで、徹夜したりしてね。
 眠る時間が、惜しかったからね。
 食事すら、ろくに、しなかったよ。
 そんなことをする暇があったら、ほんの僅か、本当にほんの少しでもいいから、やよいをトップアイドルに近づけるための、その活動に、時間を使いたかったんだ。
 今になって思うとね。
 ずいぶんと、無茶をしたなって、思うけどね。
 さっき、死ぬ気でって言ったけれど、その頃のぼくは、本当に、やよいのためなら死んだっていいと、そう思ってたよ。
 ううん。
 今だって、思っている。
 はは。
 いいよ。
 そんなに、戸惑ったような顔をしなくても。
 なに、たとえ話みたいなものだよ。
 別に、君にまで、そんな覚悟を求めてるわけじゃないよ。
 それくらい、強い気持ちでっていうことさ。
 むしろね。
 先輩として、言わせてもらうとね。
 君には、あんまり、無茶な頑張りはして欲しくないと思っているんだ。
 本当にね。
 ほんとうに。
 あの頃のぼくは、どうかしてたんだと思う。
 確かに、やよいのファンは、増えていったよ。
 嬉しかった。
 やよいを応援してくれる人が、少しずつ増えていって、CDの売り上げだって、順調に伸びていったしね。
 最初の頃は、それがもう、本当に嬉しくて、たまらなかった。
 でもね。
 人気が出るというのは、あれは、もう、ひとつの、麻薬のようなものでね。
 足りなくなるんだ。
 もっと、欲しくなるんだよ。
 人気がね。
 人気が、出れば出るほど、もっと人気が欲しくて、たまらなくなるんだ。
 この気持ち、君にはまだ、分からないだろうけどね。
 なんだろうね。
 満たされなくなってくるんだよ。
 不思議だよね。
 足りないんだ。
 どれだけ売れても、足りない。
 いつ頃からだったかな。
 新曲の売り上げを聞いても、ちっとも嬉しくなくなってしまったのは。
 ちゃんとね。
 売り上げはね、伸びていってるんだけどね。
 うん。
 右肩上がりでね。
 その頃にはもう、新曲を発売するたびに、ランキングの上位に名前が出るようになってたんじゃないかな。
 だというのに、ぼくは、喜ぶどころか、むしろ逆に、いつも苛立ちばかり覚えるようになっていたんだ。
 物足りなくてね。
 そこそこじゃ、もう、満足できない。
 もっと売れたはずだって、そう思ってしまうんだよ。
 そうするとね。
 つい、探してしまうんだ。
 売れなかった理由をね。
 疑心暗鬼というのかな。
 自分が、あんなに頑張ったのに、これだけしか売れなかったのは、きっと他に何か理由があるに違いないって、そんな風に、疑ってしまうんだよ。
 そりゃあ、もう、ずいぶんとでたらめなことも、考えたよ。
 たとえばね。
 自分以外の誰かが、手を抜いていたんじゃないか、とかね。
 君も、もちろん知っていると思うけど、一枚のCDというのは、色んな人の力が合わさって、世に出てくるものだからね。
 そうそう。
 曲や詩を提供してくれる先生たちに、アイドルソングだからといって、軽んじているのではないですかと、失礼なことを言ったりもしたっけ。
 怖いよね。
 思い込んだ人間っていうのは。
 でも、そんなのは、まだマシな方だったかもしれないな。
 スタッフには、もっと酷いことも、ずいぶんと言ってしまってね。
 うん。
 スタジオミュージシャンや、レコーディングエンジニアとかね。
 その頃のぼくは、彼らにいつも、その程度の仕事しかできないのなら、貴様らの代わりなんかいくらでもいるんだぞって、そんなことばかり、口やかましく言っていたよ。
 ミーティングの時に、一人ずつ、名指しでつるし上げたりね。
 実際に、クビにしたスタッフも、何人もいたっけ。
 現場の空気は、そりゃあもう、最悪だったよ。
 想像できるかな。
 毎日が、それこそ、通夜みたいな感じでね。
 でも、ぼくはそれすらも、そいつらがろくでもない連中だからだと、そう思っていたんだ。
 はは。
 馬鹿だよね。
 ぼくのせいなのにね。
 ううん。
 それだけじゃない。
 その頃のぼくは、CDが、思うほどに売れなかったのは、客が、ものの価値もわからない、頭の悪い連中だからだと、そんな風にさえ、考えてしまっていたよ。
 はは。
 どうしようもない馬鹿だよね。
 でも、ぼくは、自分で、その自分の馬鹿さ加減に、気がつかなかったんだ。
 そんな時にね。
 ある事件が、起きたんだよ。
 やよいが、ドタキャン騒ぎを起こしたんだ。
 ええと。
 何だったかな。
 確か、テレビの生放送あたりだったと、そう思うんだけれどね。
 ともかく、やよいは、その日、自分が出演するはずのステージに、立たなかったんだ。
 入りの時間になっても、姿を見せなくってね。
 最初は、単なる遅刻かとも思ったけれど、だんだん、本番の時刻が迫ってくるにつれて、これは、どうやら、違うらしいということが、分かってきてね。
 もちろん、やよいとは、連絡を取ろうとしたよ。
 何回もね。
 でも、繋がらなかった。
 オンエアが目前に迫った頃には、もう、大騒ぎだったよ。
 関係者は、みんなパニック状態でね。
 ステージ裏なんかは、殺気立った怒号が飛び交っていて、わけが分からなかった。
 そうだな。
 たとえば、よく、成人の日に、暴徒化した新成人が、警官隊と衝突しているニュース映像なんかを、見たことがあるだろう?
 ちょうど、そんな感じが、近いかもしれないね。
 ぼくもね。
 相当、エキサイトしていたと思うよ。
 あちこちの関係者から、悲鳴に近い声や、それこそ、脅迫まがいの怒鳴り声まで、ありとあらゆるものが、押し寄せてきてね。
 ぼくも、おんなじくらい、あちこちに、連絡を入れまくって、声が枯れるくらいに叫び散らしたよ。
 誰も彼も、混乱していて、事態を把握するのさえ、大変だった。
 どうやら、やよいは、迎えの車には、乗ったらしいんだけどね。
 途中で、ちょっと寄るところがあると、そう言って車を降りて、そのまま、行方不明になったと、そういうことらしかった。
 とにかく、局の偉い人たちに、頭を下げて、事務所に戻った頃には、ぼくはもう、へとへとになっていたよ。
 深夜だっていうのに、どこから嗅ぎつけたのか、事務所の周りにはもう、芸能記者たちが、落ちたアイスクリームにたかるアリみたいに、群がっていてね。
 電話なんかは、鳴りっぱなしだった。
 その横で、小鳥さんが、ぽつんと立ち尽くしながら、泣いてたっけ。
 社長や、やよいの家族とも話し合って、これからどうするかを、考えた。
 もし、やよいが何らかのトラブルに巻き込まれたのだとしたら、警察にだって連絡しないといけないからね。
 でも、結局、この失踪に、事件性はなかったんだ。
 二日目の夜にね。
 やよいから、連絡があってね。
 電話口で、もうアイドルを辞めますと、やよいはそう言ったんだ。
 ぼくは、わけが分からなかった。
 突然すぎてね。
 理解できなかったんだ。
 ともかく、一度、直接に会って話をしようと、そういうことになった。
 薄暗い、ホテルの部屋だった。
 きちんとしたホテルじゃあなかったよ。
 ビジネスホテルと、ラブホテルの、中間くらいのね。
 やよいは、素性を隠して、その部屋を借りていたんだ。
 そこでね。
 やよいは、ぼくに、言ったんだよ。
 もう歌いたくないってね。
 そこにいたのは、ぼくや、みんながよく知っているやよいじゃなかった。
 あの、元気いっぱいの、夏のひまわりのような明るい女の子は、もう、いなかった。
 はは。
 ぼくが、彼女を、そんな風にしてしまったんだよね。
 彼女、誰よりも、みんなと一緒に、歌や踊りで盛り上がるのが大好きだったのにね。
 それを、ぼくが、壊してしまったんだ。
 今ならね。
 それが、分かるのにね。
 でも、その時のぼくには、やよいがどうしてそんなことを言い出したのか、分からなかった。
 何を言っているんだ、って思ったよ。
 この女は、何を言っているんだ?
 もう歌いたくない、だって?
 何を言っている。
 ふざけるな。
 いきなり、スケジュールに穴を開けておいて、そのあげくに言うことが、これなのか。
 歌いたくない?
 お前の、そのわがままのために、おれが、どれだけ苦労したのか、分かっているのか。
 クソみたいな連中に、下げたくもない頭を下げて、文句と罵声を浴びせられて。
 どれもこれも、お前のせいだ。
 そう思った時には、もう、手をあげていたよ。
 最初はね。
 平手でね。
 手加減なんて、考えなかった。
 やよいの、小さな体が、人形みたいにぶっ飛んで、ベッドに転がった。
 頬が、みるみる、真っ赤に腫れ上がってね。
 でも、可哀想だとは、思わなかったな。
 ざまあみろ、って思った。
 痛いか。
 痛いだろう。
 お前が悪いんだぞ。
 お前が、ふざけたことを言いやがったからだ。
 そう思った。
 きっとね。
 今になって思うとね。
 ぼくは、やよいに、謝って欲しかったんだと思う。
 ごめんなさい、プロデューサー、ってね。
 そのひと言が聞ければ、どこかで、踏み止まることもできたんじゃないかって、そう思うんだけどね。
 でも、やよいは謝らなかった。
 あの子もね。
 あれで、なかなか、頑固なところがあるからね。
 痛みをこらえながら、目に涙をいっぱいにためて、やよいは、ぼくを、にらみつけた。
 満足ですか、って、やよいは言ったよ。
 私を、殴って、満足ですかって。
 そうやって、思い通りにならない他人を、無理矢理自分に従わせて、プロデューサーは満足ですかって。
 それが、ぼくを、おれを、さらに、苛立たせた。
 このくそあまが。
 おれを、見下げた目で見やがって。
 おれは、やよいにのし掛かり、襟元をつかんで、着ていた服を無理矢理に引きはがした。
 やよいの、まだ慎ましいふくらみを包み隠した下着が、露わになった。
 おれは、それも、引きちぎるように、はぎ取った。
 仰向けになったやよいの胸は、重力に平たくつぶれて、ただでさえ小さなふくらみが、ほとんど真っ平らになって見えた。
 おれは、やよいの乳房を、かき集めるように掴んで、こね回した。
 驚くほど、なめらかな肌だった。
 熟した女の肉とは違う。
 まだ、肉付きの少ない身体。
 おれは、その身体に、まるで憎しみを抱いているかのように、遠慮のない力をこめて、指を食い込ませた。
 やよいが、苦痛に、顔を歪ませた。
 やよいの、可愛らしい唇から、呻き声が洩れた。
 おれの中で、ひどく凶暴なものが、ぞくぞくと悦びに身悶えながら、むくむくと頭をもたげてきた。
 どうだ。
 痛いか。
 痛いだろう。
 泣き叫べ。
 そして詫びろ。
 おれに。
 おれに、屈服しろ。
 そう思った。
 だけど、やよいは、泣かなかった。
 痛いとさえ、言わなかった。
 ただ、ぐっと歯を食い縛りながら、おれを、見ていた。
 肉体的な痛みに、反射的に出てきた涙で、目を潤ませながら、それでも、やよいの視線は、おれから逃げることはなかった。
 目のくらむような憎悪が、おれの中を駆け巡った。
 畜生。
 どうしてだ。
 どうして、こいつは、おれに従わない。
 くそ。
 まだ足りないのか。
 もっと痛めつけてやらないと、分からないのか。
 いいだろう。
 やってやろうじゃねえか。
 おれは、やよいのスカートを、ホックの部分から、縦に引き裂いた。
 細く華奢な脚が、その中からあらわれた。
 乳房と同じく、まだ、発育しきっていない。
 それでも、腰回りから、ふとももにかけてのラインは、少しずつ、女らしさを備えつつある。
 花が咲く前の、つぼみのようなものだ。
 色気のない、白い綿のパンツをはいていた。
 少女趣味の、可愛らしい、くまのキャラクターの絵がプリントされている。
 だいぶ、使い古したものらしく、そのプリントは、色あせていた。
 ゴムの部分が、伸びて、ゆるくなっている。
 おれは、それを、ひと息に、引きちぎった。
 それで、やよいの身体を覆い隠すものが、何ひとつなくなった。
 おれは、やよいを組み伏せたまま、その肉体に、無遠慮に、じろじろと、視線を這わせた。
 血色の良さそうな、健康的な肌色をしていた。
 薄く広がった乳房の真ん中で、濃い桜色をした乳首が、そこだけ、自己の存在を主張するように、ぽつんと天を向いていた。
 おれは、そこに、むしゃぶりついた。
 唇をすぼめて、吸い付いた。
 吸い上げながら、先端を、舌の先で、ちろちろと舐った。
 やよいが、おれの下から、這い出ようとするように、大きく身悶えした。
 だが、無駄だった。
 おれは、やよいの両腕を、バンザイをするように持ち上げさせ、がっちりと頭上で押さえ込んでいた。
 これでは、逃れようがない。
 元々、腕力では、敵うはずもないのだ。
 性別の差も、もちろんある。
 だが、それを抜きにしても、やよいと、おれとでは、体格に差がありすぎるのだ。
 大人と子供だ。
 たとえ、どれだけ、やよいが、必死になって暴れようとも、彼女を拘束したおれの腕は、びくともしない。
 ぷはあ、と、おれは、やよいの乳首から、唇を離した。
 唾液にまみれた肉の突起が、薄暗いルームライトの光を受けて、てらてらと濡れ光っていた。
 おれは、やよいの乳房を、左右から鷲掴みにして、ぎゅっと中央へと寄せた。
 はっきりと、おれに吸われた乳首の方が、大きくなっていた。
 はは。
 と、おれは、黒々としたものを吐き出すように、笑った。
 こんなに未発達な身体であっても、やはり、この肉は、雌の肉なのだ。
 男に抱かれ、悦び、悶えることを、その内側に秘めているのだ。
 おれは、左手でやよいの両腕を拘束したまま、右手で、やよいの脚を抱え込むようにして、股を開かせた。
 やよいのそこは、無毛だった。
 剃っているのではない。
 まだ、陰毛が生えそろっていないのだ。
 未成熟な股間だった。
 桃のような、ふっくらとした恥丘の真ん中に、ぴったりと閉じた肉の合わせ目が、縦にひと筋、走っている。
 あっけないほど、何もない。
 とても、男のものを受け入れられそうには見えなかった。
 おれは、そこに、指を這わせた。
 中指の腹でだ。
 柔らかな肉の感触がした。
 温度を持った肉だ。
 その肉の狭間に指を割り入れようとすると、ぷりぷりとした弾力が、おれの指をはじき返してくる。
 おれは、夢中になって、やよいの股間をほじくった。
 むろん、どれだけ弄くろうとも、そこが、潤みを帯びてくるはずもない。
 だが、おれのペニスは、もう、はちきれんばかりに膨らんでいた。
 突っ込みたくて、たまらなかった。
 女の肉に。
 この穴に。
 おれは、ズボンのジッパーを下ろして、自分のペニスを取り出そうとした。
 だが、痛いほどに勃起したペニスが、テントの梁のように、ズボンの布地を押し上げていて、なかなかうまくいかない。
 くそ!
 おれは、ジッパーを下ろすのをやめて、ベルトのバックルを外した。
 下着ごと、ズボンを脱ぎ下ろした。
 ぶるんと、勢いよく、おれのペニスが、外に躍り出た。
 ひっ、と、やよいが息を呑むのがわかった。
 はは。
 怯えてやがる。
 そりゃそうだろうな。
 勃起した男のペニスを見るのは、これがはじめてなんだろう。
 ちんちんくらいは、見たことがあるか。
 だが、こいつは、お前の弟たちが、ぶら下げている、可愛らしいものとは、似ても似つかないだろう。
 肉でできた凶器だ。
 女の肉を貫き、犯すための器官だ。
 おれは、自分のそれを、根本を握って、やよいの口元に突きつけた。
 唇に押し当てた。
 どうだ。
 やよい。
 誰かと、キスをしたことはあるか。
 ないなら、これが、お前の、ファーストキスだ。
 おれは、ペニスを握った手を左右に振り動かし、ぱんぱんに張った亀頭の先で、やよいの唇をなぞった。
 やよいは、口を閉じたまま、いやいやをするように、首を振った。
 はは。
 違うぞ、やよい。
 キスってのは、唇を触れ合わせるだけじゃあない。
 そんなのは、ガキのするやつだ。
 ほら。
 口を開けろ。
 おれは、やよいの鼻を指でつまんで、ぎゅっと押さえつけた。
 これで、やよいは、鼻で呼吸することができない。
 それでも、しばらくの間、やよいは唇を真一文字に結んだまま、我慢した。
 しびれを切らしたおれは、やよいの下あごを掴んで、無理矢理に、口を開けさせた。
 ねじ込んだ。
 根本まで。
 おれの、陰毛の茂みに、やよいの顔が、半分ほど埋まって隠れた。
 先端が、喉のあたりまで届いたのだろう。やよいが、苦しげにえずいた。
 おれのものを、はき出そうともがいた。
 だが、おれは、それを許さなかった。
 やよいの、左右で結んだ髪の毛を、ハンドルを握るように両手で掴んで、おれは、腰を突き入れた。
 犯した。
 ぬらぬらとした、口の中の粘膜が、おれを包んだ。
 心地よい温かさが、ぞくぞくとおれの背骨を駆け上がっていく。
 やよいが、苦しそうに、悶える。
 頭を押さえつけられながら、それでも、なんとか口内を満たしたペニスから逃れようと、首を振る。
 その動きが、さらに、おれのものを、刺激した。
 唇が擦れる。
 舌が触れる。
 いいぞ。
 しゃぶれ。
 おれのものをしゃぶれ。
 吸うんだ。
 おれは、角度を変えて、深く腰を突き出した。
 やよいの頬が、内側から押されて、餌を溜め込んだハムスターのように、ぷくっと膨らむ。
 はは。
 いい顔だ。
 可愛いよ、やよい。
 やよいの下唇から、泡立った唾液が、糸を引いて落ちた。
 あふれた唾液は、おれのペニスにも絡みつき、もっさりと茂った陰毛が、垂れてきたその唾液を吸って、たっぷりと濡れている。
 深く突き入れるたびに、やよいの可愛らしい鼻先が、その中に埋まる。
 んふう。
 ふすう。
 んふう。
 と、息苦しそうに繰り返されるやよいの鼻息が、おれの陰毛を揺らした。
 くすぐったい。
 その、くすぐったさも、快感となって、ざわざわとおれの中を駆け巡ってゆく。
 おお。
 ぞくりと、射精の予感が背筋を這い上がってきた。
 おれは、やよいの頭部を抱え込むようにして、深々と腰を突き入れた。
 さらに硬さを増したおれのペニスが、やよいの口穴を抉った。
 その先端から、びゅるびゅると、はじけるように、精液が迸った。
 やよいも、自分の口の中に、何かが出ていることは分かったらしい。
 驚いたような、戸惑いの表情が、やよいの顔に浮かんだ。
 はは。
 どうした。
 射精についてなら、保健体育で習っただろう?
 今、お前の口の中に出たのが、精液だ。
 オタマジャクシみたいな、精子が、その粘ついた液体の中に、何億匹も泳いでいるってのは、知ってるか。
 よかったなあ。
 味までは、学校じゃあ、教えてくれないだろう。
 友達に自慢してやるといい。
 おれは、ゆっくりと腰を引いた。
 唾液と、精液が絡みついたペニスが、まだその硬さを保ったまま、やよいの唇から抜けて出た。
 ようやく、口の中を蹂躙していた異物から解放されたやよいが、けほけほと、むせた。
 おっと。
 吐き出すんじゃないぞ。
 おれは、やよいの口元を、手のひらで押さえた。
 さあ。
 飲め。
 おれのザーメンを飲み干せ。
 やよいの、細く華奢な喉が、上下に動いて、口の中のものを嚥下するのを、おれは見つめた。
 はは。
 こいつ、マジに飲みやがった。
 精液を。
 おれは、やよいの首もとから、へその上部までを、身体の中心線に沿って、そっと指先でなぞった。
 ここを。
 この中を。
 おれのペニスから吐き出された汚らしいザーメンが、運ばれていったのだ。
 その様子を、克明に想像する。
 たまらない悦びが、おれの中に満ちた。
 この、人形のように可愛らしい少女は、その肉の内側に、白濁したおれの精液を、取り込んでいるのだ。
 まったく、最高のミルク飲み人形じゃないか。
 おれの逸物は、放ったばかりだというのに、少しも萎える気配がなかった。
 むしろ、飲精するやよいの姿に、それまでよりも、さらに硬く勃起していた。
 さあ。
 やよい。
 なにを、そんなに、ぐったりしているんだ。
 まだ、授業は終わりじゃないぞ。
 次は、いよいよ、セックスについて、教えてやらないとな。
 赤ん坊の作り方だ。
 理科の時間に、草花が、受粉して、種子を作るってのは、習ったか。
 それと一緒だ。
 植物なら、めしべに、花粉がついて、種ができる。
 動物なら、交尾。
 人間なら、セックスだ。
 まあ、呼び方の違いなんてのは、どうでもいい。
 雄が、雌の中に、精子を届ける。
 そのための行為だ。
 そうして、精子と出会った卵子が、受精して、赤ん坊のもとになるんだ。
 そのやり方を、おれが、今から、教えてやる。
 実演でな。
 はは。
 ひょっとしたら、それで、お前の腹の中に、おれの子ができちまうかもしれないな。
 なあに、心配しなくてもいい。
 堕ろす金くらい、いくらでも出してやる。
 会社の経費でな。
 なにしろ、お前は、大事な金の卵だからな。
 アイドルが、腹ボテじゃ、売り物にならないだろう?
 もっとも、そういうのが、好きな連中も、多少はいるかもしれないがな。
 だが、お前は、トップアイドルだ。
 そんな、キワモノは、そこらの売れないゴミタレどもにやらせておけばいい。
 こういう業界にいるとな。
 口の固い、訳ありの客を扱う病院だって、知ってるんだ。
 だから、安心して、孕め。
 おれは、やよいの膝を掴んで、脚を広げさせた。
 アルファベットの、Mの字に。
 これだけ、股を大きく開いているというのに、やよいのそこは、きちんと閉じていた。
 はっ。
 おれは苦笑した。
 まったく、持ち主に似て、強情な穴だ。
 おれは、そこに顔を近づけて、くんくんと、鼻を鳴らした。
 つんとした強烈な刺激臭が、おれの鼻をついた。
 小便や、汗や、色々なものが入り混じった臭いだ。
 処女の臭いだった。
 おれは、その肉の合わせ目に、むしゃぶりついた。
 舌先で、割れ目の中をまさぐりながら、唾液を、たっぷりと塗りたくった。
 ぷじゅ、ちゅぐる、ぴじゅる。
 音を立てて、すすりあげる。
 これまで、そこをそんな風に刺激されたことなど、一度もないのだろう。
 自らの肉体が、初めて知覚する、得体の知れない感触。
 やよいが、どうしていいか分からないといった風に、小さく、腰を動かした。
 おれは、やよいの股ぐらから、顔をあげた。
 のしかかるようにして、やよいの上に、覆い被さった。
 ペニスを握る。
 先端を、おれの唾液で濡れたスリットに、押し当てた。
 押し込んだ。
 周囲の肉が、巻き込まれたように、ぐうっと内側にへこんだ。
 その中央より、やや下側のあたりから。
 入っていく。
 おれのものが、やよいの中へと。
 なんという抵抗。
 狭いなんてものじゃない。
 元々、穴などない、ただの壁に向かって、ペニスを突き入れようとしているかのようだった。
 肉の壁だ。
 みぢ、めぢぢ、ぶぢ。
 と、その肉が、引き裂けてゆく。
 人体を構成する体組織が、その柔軟性の限界を超えてなお押し広げてくる力に、無惨に敗北して引きちぎれてゆく、その感触が、ペニスを通して、おれに伝わってくる。 
 絶叫するような、やよいの悲鳴が、おれの耳に届いてくる。
 はは。
 どうした。
 そんなに痛いか。
 おれに、殴られた時だって、そんな声はあげなかったのにな。
 自業自得だ。
 おまえが、おれを挑発しやがったからだ。
 容赦なく、おれは、やよいの中に、鉄柱のように硬くなった自分自身を、根本まで埋め込んだ。
 ごづん。
 と、先端が、今度こそ本当に、終点にぶち当たった。
 く。
 くはは。
 ははははは。
 おれは震えた。
 単純で、原始的な悦びが、おれの中を駆けめぐった。
 女の肉を、征服し、支配する悦びだ。
 たまらねえ。
 どうだ。
 やよい。
 初めて、男に貫かれた気分は。
 一本の縦筋に過ぎなかったおまえのヴァギナが、おれのものを咥え込んで、歪な形に広がっているぞ。
 分かるか。
 おれのペニスが、腹の中で、おまえの子袋を押し上げているのが。
 はは。
 ずいぶんと、見事に、開通したじゃないか。
 それにしても、おまえの穴は、きゅうきゅうと、すごい力で、おれを締め付けてくる。
 気を抜くと、あっという間に、イッちまいそうだ。
 せっかくの、処女穴なんだからな。
 たっぷりと楽しまないとな。
 よし。
 おれは、太く息を吐き出した。
 動いた。
 思い切り。
 激しく。
 遠慮など、かけらもなかった。
 当然だ。
 おれが、気持ちよくなるために、動いているんだからな。
 やよいの肉穴を、犯し、味わいつくすための動きだ。
 やよいの喉から、ひゅうひゅうと、風の抜けるような聞こえてくる。
 叫びすぎて、声も出せなくなったか。
 いいさ。
 そのほうが、やかましくない。
 ああ、そうだ、これは、セックスじゃあないな。
 セックスじゃない。
 オナニーだ。
 おれは、やよいの肉穴を使って、自慰をしているのだ。
 はは。
 トップアイドルが、オナホールか。
 なんとも、ぜいたくなオナニーじゃないか。
 温度を持ったぬめりの中を、おれは運動した。
 出入りするおれのペニスに、赤々としたものが絡みついている。
 血だ。
 破瓜の血だった。
 ぬちぬちと、濡らした雑巾を踏みつけるような音が、結合部から響いてくる。
 まだ、可憐な花弁のような、やよいの肉ビラが、出入りするおれのペニスを包んでいるのが見える。
 ざわざわと、やよいの内側が、おれを刺激する。
 なんと複雑な動きをする穴なのか。
 おまえの雌穴は、ほんとうに具合がいい。
 おれひとりが使うには、もったいないくらいだ。
 そうだ。
 今度、ファンを集めて、みんなでおまえを輪姦してやろうか。
 握手会みたいなもんだ。
 参加費は、一人あたり百万くらいでな。
 はは。
 儲かるぞ。
 大丈夫だ。
 おまえとやれるなら、それくらい払っても惜しくない連中が、腐るほどいるからな。
 だが、今は、この穴は、おれのものだ。
 おれだけの。
 ほおう。
 おふ。
 おふ。
 はああ。
 くはあ。
 と、おれの口から、獣のような呼気が洩れる。
 その呼気と共に吐き出された涎が、糸を引いて垂れ、やよいの上に点々と落ちる。
 たまらねえ。
 たまらねえぞ。
 この穴。
 やよい。
 おれは、奥歯を噛みしめながら、やよいを犯した。
 全身の毛穴から、汗がふきだしている。
 熱い。
 滾々と、おれの中から、熱いものが湧き上がってくる。
 熱く、どろどろとした、マグマのようなもの。
 どす黒いマグマだ。
 それが、おれの中に満ちてゆく。
 さあ、やよい。
 いくぞ。
 いく。
 おまえの中に。
 注ぎ込んでやる。
 たっぷりと。
 おれは、吼えた。
 叫んだ。
 目ん玉がぐるりと裏返り、視界が真っ白になった。
 限界まで圧力の高まったマグマが、やよいを貫いたペニスの先端から、爆発するように迸った。
 身体の芯から、根こそぎ引っこ抜かれるような、強烈な射精だった。
 こんなに長い射精は経験したことがなかった。ペニスが激しく脈動し、陰嚢が狂ったように上下して大量のザーメンを送り出した。睾丸まで一緒に吐き出してしまったのではないかとさえ思った。
 どうだ。
 やよい。
 分かるか。
 おまえの腹の中で、おれのペニスが、激しく射精をしているのが。
 一番奥でだ。
 おまえの子宮に、おれの精液が注ぎ込まれていく。
 さあ。
 孕め。
 おれの子を孕め。
 がちがちと歯が鳴った。あまりの快感に、おれの身体が激しく痙攣していた。悦びがおれを満たした。このまま死んでも構わないとさえ思った。やよいを抱いて死ぬのだ。これ以上の死に場所があるか。おれが死んで、やよいの中に、おれの子が残る。
 やよい。
 どのくらい、おれは、そうしていたのだろうか。
 ふと、泣き声が聞こえてきた。
 それで、目が覚めた。
 どうやらおれは、いつのまにか、眠っていたようだった。
 いや、もしかしたら、気を失っていたのかもしれない。
 肌が、ひんやりと冷たい。
 全身に、びっしょりと汗をかいていた。
 その汗が、蒸発して、おれの肌から、熱を奪っていっているのだ。
 身体が重い。
 まるで、自分の肉体が、鉛になってしまったようだ。
 ぼんやりとした、もやのようなものが、意識を覆っている。
 やはり、おれは、眠っていたのだろうか。
 あるいは、おれが眠っていたと思っているのは、ほんの数秒のことで、実際には、おれが、やよいを犯してから、まだどれだけも経っていないのだろうか。
 分からなかった。
 分からない。
 分からないという、そのことを考えている。
 無駄な思考だ。
 それよりも、考えることがあるはずだ。
 ああ。
 そうだ。
 この泣き声だ。
 知っている。
 この声は、知っているぞ。
 すすり泣くような、この泣き声。
 やよい。
 泣いてるのは、やよいじゃないか。
 どうした。
 泣くなよ。
 おまえに、もう二度と、そんな思いはさせないぞって。
 そう思って、ずっと、頑張ってきたんだ。
 だからさ。
 泣かないでくれ。
 やよい。
 ごめんよ。
 ごめん。
 ごめんなさい。
 おれが、ぼくが、おまえを、泣かせてしまったんだね。
 なあ。
 やよい。
 泣くなよ。



「以上で、被告人の尋問を終わります」


  了