ばさくぴっちゃ

 ドアをノックする音に、ティオは読んでいた聖書を机に置いて振り返った。
「誰?」
「あたしよ」
「ああ、おかえりなさい、姉さん」
 ティオはドアに歩み寄り、ロックを外した。ドアが外から開けられ、室内に一人の女アルケミストがずかずかと入ってきた。
「何よ、あんたまた勉強してたの?」
 フィリアという名の女アルケミストは、机の聖書に視線をやり、やれやれと言った様子で呟いた。
「よく飽きないわねぇ。そんなに面白いの? 勉強ってさ」
 学問の徒たるアルケミストとは思えぬ台詞を口にするフィリアに、ティオ思わず苦笑いし、
「うん、面白いよ。姉さんも読んでみる?」
 そう言った。
「パス。きっと数ページ読んだだけで目眩がしちゃう」
 フィリアは顔をしかめ、手を振りながらそう答えた。
「そんなことないよ。姉さんならきっと、僕よりずっと早く理解できるんじゃないかな」
「無理だって。あたし頭悪いもん」
 フィリアはそう言ったが、ティオはそれが謙遜であることを知っていた。
 大胆に太ももを露出したミニスカートに、胸元を強調した上着。
 ゆるくウェーブのかかった髪に、濃い目のメイクを施した顔。
 お世辞にも真面目そうには見えないこの姉が、実際には誰よりも努力家であることを、ティオはよく知っていた。
 二人きりの姉弟である。
 両親は、ティオが幼い頃に亡くなった。
 以来、フィリアは親代わりとなってティオを育て、この家を守ってきたのである。
 いくら年が離れているとはいえ、当時はまだフィリアも少女と呼ばれるような年齢だったはずだ。幼いティオの面倒を見つつ、日々の糧を得るために働くというのは、想像もできないような苦労があったに違いない。
 そんな苦しい生活の中、地道に努力を重ね、アルケミストにまでなったのだ。
 今の自分があるのは、この姉のお陰だと、ティオはそう思っている。
「それよりも、さ。ちょっと頼みたいことがあるんだけど」
 フィリアは顔の前で両手を合わせ、大げさにお願いのポーズを取った。その顔に、どこかいたずらっぽい笑みが浮かんでいる。
 姉がこういう顔をする時は、何か自分にとってよくない頼みごとを持ってこられる前兆だとティオは経験から知っていたが、同時に、それを断ることができない自分というものも、ティオはよく理解していた。
 口には出さないが、今まで苦労をかけてきた分、これからは自分が姉を支えていきたいという思いが、ティオにはあった。
 だからそれが例えどんな無茶な頼みごとだろうと、姉が自分を頼ってくれるということが、ティオには嬉しかったのである。
「うん、いいけど……。なに? 頼みたいことって」
 ティオがそう言うと、フィリアはぱっと顔を輝かせ、
「やったぁ! やっぱり持つべきものは物分りのいい弟ね。で、早速だけど、新しいスキルの実験台になって欲しいの」
 と言った。
「新しいスキル?」
「うん。バーサークピッチャーっていうんだけど」
 聞いた事がある、とティオは思った。
 バーサークポーション――肉体と精神を過度の興奮状態にすることにより、服用した者の戦闘能力を大幅に向上させる薬だ。
 だが、アコライトであるティオは、バーサークポーションを服用することはできない。
 バーサークポーションはその強大な効能と引き換えに、もたらされる副作用もまた激しいため、それに耐えうるだけの力を持ったものしか服用を許されない、一種の劇薬なのである。
 だが、過去にはバーサークポーションの副作用を和らげ、誰でも服用できるようにすることに成功したアルケミストも存在したという。
 その技術はもはや失われて久しいが、近年の魔術研究の進歩により、古代のアルケミストの魂を呼び出し、その能力を得る方法が開発されたということを、ティオは耳にしていた。
「ってことは姉さん、アルケミストの魂を?」
 フィリアは頷き、
「ええ。知り合いのリンカーに頼んで、憑依させてもらったの」
 と言った。
「それで、憑依が解ける前に試してみたいんだけど、いい?」
「それは、今すぐにってこと?」
「うん。憑依は短い間しか持たないみたいだから」
「分かったよ。で、僕はどうすればいいの?」
「じゃあ、そこに座って」
 言われるままに、ティオはベッドの縁に腰掛けた。
 フィリアはカバンからバーサークポーションの入った瓶を二つ取り出し、瓶の口を塞いでいたコルクを抜いた。独特の匂いのする蒸気が、瓶の口から洩れ出す。
 フィリアは瓶の首の部分を指に挟み、その手を振りかぶるように持ち上げた。
「よし、準備はオーケー。はい、あーんって口開けて」
「んっ……あーん」
 ティオが口を大きく開いたそこに、
「いくわよぉ……バーサークピッチャー!」
 気合一閃、フィリアは思い切り腕を振り下ろし、瓶の中身をティオの口の中めがけてぶちまけた。
「んがっ! んくっ……げほ、げほっ!」
 口内、いや喉に直接叩きつけるかのように注ぎ込まれたバーサークポーションは、ティオの意思とは無関係に胃の中へと嚥下されていった。
「よぉしっ、我ながら見事なコントロールだわ!」
 フィリアは左手をぐっと握り締め、満足そうな笑みを浮かべた。
「ちょっ……姉さん、これホントに正しいやり方なの?」
 ティオは口元を手の甲で拭いながらそう言った。
「ええ。私に宿った古代アルケミストの魂が、こうしなさいって言ってたもの。間違いないわ。さ、どう? どんな感じ?」
 ニコニコと笑いながらフィリアはティオの顔を覗き込んだ。
「どんな感じって、別に……」
 なんともない、と言いかけたティオの顔が、不意に歪んだ。
「つっ……! あ……」
 呻き声のような声をあげ、ティオは俯いて自分の胸を押さえた。
「ティオッ!?」
 突然の弟の変調に、フィリアの顔色が一変した。
「あぐ……っは……ぁ……」
 ティオは苦しそうに顔を歪ませ、自らの体を抱くようにぎゅっと腕を寄せている。
 まさか、失敗――!?
 ぞくり、
 と、フィリアの背筋を冷たいものが走り抜けた。
 方法は間違っていなかったはずだ。なのに、どうして――
 瞬間、混乱に向かって加速しかけた思考を、頭を振って追い払う。
 原因を考えるのは後からでいい。今は、ティオのことが最優先だ。
 フィリアはティオに駆け寄り、額に手をあてた。
「やめてっ……!」
 その手を、ティオは拒絶の声と共に振り払った。
「ダメよ、こんなに汗が出てるじゃない。顔も熱っぽいわよ。いいから診せなさい」
 フィリアは強引にティオの額に触れた。
「あっ……」
 びくん、とティオの体が震え、その口から小さく声が洩れた。
「わ、凄い熱――。これは着替えないとダメね。ティオ、脱がすわよ」
「えっ……!? だ、大丈夫だよ姉さん。自分でできるから、早く部屋を出てっ……!」
 その返答を無視してティオの衣服を脱がしにかかったフィリアの手が、ふと止まった。
 フィリアの視線が、ティオの体のある一点に注がれていた。
「ティ、ティオ……?」
 薬の作用で紅潮していたティオの顔が、さらに赤く染まった。
 フィリアの視線は、ティオの股間から隆々と天を向いてそびえている、ティオの分身へと注がれていた。
 華奢な体に似合わぬ大きさを持ったそれは、はちきれんばかりに膨らみ、無数の青筋を浮かべてびくびくと脈動していた。
 もちろん、フィリアはティオの性器を見たことがないわけではない。だがそれは、ティオがまだ幼い子供だった頃の話だ。今のそれは包皮に包まれた可愛らしいものではなく、性交のための器官としての本性を剥き出しにした、ある種の凶暴ささえ感じさせるものであった。
「ティオッ!?」
 ティオは顔を俯けたまま、何も答えなかった。代わりに、苦しげな吐息がその口から洩れた。
「ティオ……これはどういうこと?」
 恐る恐る、フィリアはそれに手を伸ばした。指先に、驚くほどの硬さと温度が触れる。
「くぅっ!」
 呻き声と共にティオは顔をあげ、潤んだ瞳がフィリアを見上げた。その奥に揺らめくのは、間違いなく欲望の炎であった。
「ね……姉さん……僕……」
 硬く勃起した己自身を姉に見られた羞恥心よりも、なお深い苦しみを湛えた声がティオの口から溢れた。
 ようやく、フィリアはティオを苛む症状が何であるかを悟った。
 バーサークポーションの副作用が、ティオの性欲を過剰に暴走させているのである。
 だが、どうすればティオの苦しみを和らげることができるのか――
 方法がないわけではない。それを、フィリア自身は知っていた。
 しかし、ティオと自分は、姉弟である。
 フィリアが戸惑っている間にも、
「はぁっ…ぁ……」
 熱にうなされたようなティオの声が、フィリアの胸を締め付けていく。
 フィリアは意を決したように顔をあげ、
「――大丈夫よ、ティオ。あたしに任せて」
「え?」
 ティオがその言葉の意味を理解する前に、フィリアは体を屈ませ、ティオのものを口に含んだ。
「ひぁっ……!」
 初めて感じる温かな口内の感触に、ティオは体を仰け反らせて、悲鳴のような声をあげた。
「ね……姉さんっ!? 何をっ……」
「んっ……ちゅぱ……ちゅくっ……」
 ティオはフィリアの頭を両手で押さえ、その口淫から逃れようとしたが、激しい快感に打ち震える体は既に抵抗する力を失っていた。
 フィリアの唇が根元までティオの肉棒を咥え込み、舌がねっとりと脈打つそれを舐め上げていく。
「ふぁあっ……ん! ダメっ……姉さんっ、出ちゃっ……ぅ!」
 ティオは残る力を必死に振り絞り、フィリアの口から自分のものを抜き取った。同時にティオの体がびくんと大きく痙攣し、反り返った肉棒の先端から熱い樹液が迸った。
「あんっ!」
 フィリアは目を閉じ、顔でそれを受け止めた。
「あっ……ごめ……んなさいっ、僕っ……」
 謝りながら、どくどくと溢れ出す白い粘液はなおもフィリアの顔を汚していく。
 驚くほど大量に放出し、ようやく射精が止まった。
「んっ……、いっぱい出たわね」
 フィリアは鼻筋を垂れ落ちる精液を指で拭いながら、そう言った。
「ごめんなさい、姉さん、僕……とんでもないことを……」
 しゅんと顔を俯けたティオに、フィリアは優しく微笑みかけた。
「ううん、いいのよ。元はといえば私が悪いんだから」
「そんな……、でもっ……」
「もうっ! 私がいいって言ってるんだから、いいの! それよりも、落ち着いた?」
「……うん」
「そっか、よかった。じゃ、私は顔洗ってくるわね。ティオも裸のままだと風邪ひいちゃうわよ」
 フィリアはそう言って立ち上がろうとし、
「あ――れ?」
 ぐらりとバランスを崩し、ベッドに倒れこんだ。
「姉さん!?」
「だ、大丈夫……ちょっとふらっとしただけだから」
 フィリアはそう言って再び立ち上がろうとしたものの、手足はまるで自分の体ではなくなってしまったかのように、言うことを聞こうとしなかった。
 妙な気だるさにも似た感覚が、フィリアの全身を覆っていた。
 そして、その奥から湧き上がってくる、肉の疼きが。
「な……、何で? こんな……私っ……」
 フィリアの意思とは無関係に、体は火照り、疼きは加速していく。
「ど、どうしたの? 姉さん。どこか苦しい?」
「んっ……!」
 ティオは心配そうにフィリアの背中をさすった。その刺激さえも快感に感じ、フィリアはびくんと体を震わせた。
「あっ、ご、ごめんっ……」
 自分が手を触れたことで何かよからぬ結果を招いてしまったのかと、慌ててティオが手を引いた。
 フィリアは顔をあげ、
「ううん、違うの。その……もっと触って……」
「えっ!?」
「お願い、ティオ。私のためだと思って……ね」
「う、うん……」
 恐る恐る、ティオが手を伸ばした。
 指先がフィリアの露出した太ももに触れた。
「はぁっ……ん!」
 ぞくりとフィリアは身震いし、ため息にも似た声を洩らした。
「ね、姉さん?」
 戸惑ったような顔のティオに、
「止めないで。もっと付け根のほうまで……」
 フィリアは潤んだ瞳でティオを見つめながら、そう哀願した。
「う、うん。分かったよ」
 ティオの手がフィリアの足の間を遡り、短いスカートの中へ潜り込んだ。
「んんぅっ……!」
「姉さん、ここ?」
 ティオの指先が、股間を覆った薄い布地に触れた。
「うん、そうっ……、お願い、脱がして……直接触って欲しいの」
 ティオは頷き、パンティに手をかけ、ゆっくりとずり下げていった。
 むっとするような雌の匂いが、ティオの鼻をついた。
 フィリアは仰向けになり、自分から足を開いて、たっぷりと潤みを帯びた自分の秘所をさらけ出した。
「お願いっ、私のここ、弄って……」
「う、うん……」
 初めてみる異性のそれに、ティオは思わずごくりと唾を飲み込んだ。
 ティオはそっと指の腹で潤んだ肉の花びらに触れた。
「ひぁんっ!」
 甲高い声が、フィリアの口から洩れた。
 既にぐっしょりと愛液を溢れさせたそこを、ティオの指がくちゅくちゅと音を立てて撫で回していく。
 その動きに呼応するように、フィリアの口から途切れ途切れに甘い悲鳴が洩れ出す。
「も、もっと……激しくっ、中までっ……!」
 ティオは中指を立て、ずぶりとフィリアの中に沈みこませた。
「ふぁああっ……ん!」
 フィリアの膝ががくがくと震え、柔らかな肉の襞が、吸い付くようにティオの指に絡み付いてきた。
 次々と溢れる愛蜜を掻き出そうとするかのように、ティオの指がフィリアの内側を抉ってゆく。
「ね、姉さん……」
 これまで見たこともない姉の痴態に、ティオは戸惑うと同時に、はっきりと興奮していた。あるいは、バーサークポーションの効果がまだ切れていなかったのか、ティオの足の間で、萎えていたペニスが再びむくむくと硬度を増してゆく。
 フィリアもそれに気付いた。そそり立ったティオの分身にじっとりと視線を絡みつかせる瞳は、隠し切れない欲望の光を帯びていた。
「――いいよ、ティオ」
 小さく囁くように、しかしはっきりとフィリアはそう口にした。
「えっ!?」
「入れたいんでしょ? いいよ、しても」
「そんな、ダメだよ……あっ!」
 ティオの体がぞくりと震え、口からとろけたような声が出た。フィリアが、そそり立ったティオのものをぎゅっと手で握り締めていた。
「私がして欲しいって言ってるの。ね? お願い、ティオ」
 僅かに残っていたティオの理性は、フィリアの指先が紡ぎだす快感の前にもろくも崩れ去った。
「姉さんっ……!」
 ティオはフィリアに覆いかぶさるようにして、両足の間に自分の体を割り込ませた。
 ぐいぐいと腰を押し付けてくるティオ。だが不慣れなためか、あるいは昂ぶりすぎた感情のためか、硬くそそり立ったティオのそれはぬるぬると表面を滑るだけだった。
「んっ……ティオ、ここよ」
 フィリアはティオの分身に手を添えて、先端を自分の中心に導いた。途端に、ずにゅっとティオが肉の谷間をかき分けるようにして、フィリアの中に潜り込んできた。
「あぁっ……! はっ……ぁんっ!」
「うああっ……! んくっ……ぅ!」
 電流のような快感が体中を駆け巡り、二人はたまらず声を上げた。
「すごっ……姉さんの中っ、熱くて……気持ちいいっ……」
「うんっ、私も……気持ちいいよぉっ……!」
 すぐに抽送が始まった。まるで鉄のように硬くなったティオのものが、たっぷりと潤みを帯びたフィリアの中をぐちゅぐちゅと音を立ててかき混ぜていく。そのたびに、二人の口から甘い喘ぎが洩れた。
 激しい突き入れを繰り返しながら、ティオの唇と舌がフィリアの柔らかな胸の膨らみを這い、先端の突起を唾液で濡らしていく。そこは硬く充血し、痺れるような快感をフィリアにもたらしていく。
「んんっ! あ……ふぁぁっ!」
 蕩けたような二人の目。半開きの口元から、愉悦の塊が声となって吐き出される。フィリアはティオの体に足を絡め、自分から腰を振って快感を貪っていた。ティオも本能のままにフィリアの中をかき混ぜ、柔らかな肉襞を存分に陵辱していく。
「ティオっ……ティオ!」
「姉さんっ……姉さんっ!」
 お互いを呼ぶ声に淫猥な水音が混じり、更に深く繋がりを求めて肉体を重ねあう。古ぼけたベッドのスプリングが奏でる軋みが、旋律に律動を刻んでゆく。
「あっ……姉さん、僕っ……もうっ……」
 ティオの体がぶるぶると震えた。食いしばった歯は、もはや限界が近いことを示していた。最後に残った理性が、ティオの腰を後ろに引かせようとした。
「ダメ! 中に出して! 私の中にティオのを注いでっ!」
 だが、それはぎゅっと絡められたフィリアの足によって阻まれた。
「くぅっ……! あぁああっ……!」
 耐え切れず、唸るような声と共に熱い迸りがフィリアの一番奥を叩いた。
「はぁああっ……ん! ふぁあああっ……!」
 同時に、フィリアの体がびくんと跳ねた。膣壁が収縮し、根こそぎ吸い出そうとするかのようにティオのものを搾り上げていく。
「あっ……あぁっ! 姉さ……ん……!」
 大きく体を震わせながら、ティオはどくどくと大量の精液をフィリアの中に注ぎこんでいった。それを感じながら、フィリアも激しく全身を震わせ、絶頂の余韻に忘我するように酔いしれた。


「――ふむ、なるほどねぇ」
 机に向かって何やらぶつぶつと呟く姉の背中を、ティオは顔を赤らめながら見つめていた。自分の精液をこうしてあれこれ調べられるというのは、どうにも気恥ずかしい。
「よし、大体のところは分かったわ」
 と、フィリアはティオに向きなおって言った。
「大量に摂取したバーサークポーションの成分が、精液の中に溶け込んでたのね。あれは揮発性のものだから、顔にかかった時に蒸気を吸い込んじゃったのかも」
「そ、そうなんだ」
「でも、バーサークポーションに誘淫効果があるなんて知らなかったわ。耐性のない人は飲んじゃダメとは聞いてたけど、こういうことだったのね」
「ふぅん……」
 と、ティオが気のない返事をすると、フィリアはにやっと笑みを浮かべて、
「何よぉ、ティオ。まだし足りないの?」
「な、ななっ!? ち、違うよっ!」
 途端に耳まで赤くなったティオを見て、フィリアは今度は声をあげて笑った。
「あはは、そんなに真っ赤にならなくてもいいじゃない」
「なっ……、というか、元はといえば姉さんがバーサークピッチャーに失敗したのがいけないんじゃないか!」
「あー、それねぇ。どうやらソウルリンクの効果時間が切れちゃってたみたい。リンクしてた時の記憶はあったから、それで上手くいくかなーって思ったんだけど」
 あっけらかんと言い放つフィリアに、ティオは一瞬ぽかんと口を明け、
「そんな、無責任な……」
 と呟いた。
「いいじゃない、後遺症もないみたいだし」
「でもっ……、姉弟であんなこと、しちゃったのに……」
「……あー、そういえばティオは知らないんだっけ」
「な、何を?」
 フィリアはずずいとティオに顔を近づけ、
「実はね、私たちほんとの姉弟じゃないの」
「え……えぇえええっ!?」
 今日一番の驚きの声を上げるティオの額に、フィリアはちゅっと口付けた。
「だから、したくなったらまたいつでも……ね」
 軽くウインクしながら耳元で囁くフィリアに、ティオはただこくんと頷くことしかできなかった。