壊れた笑顔

 彼女がその仕事に志願したのは、本当に純粋な使命感からだった。
 彼女は心からみんなの笑顔を愛していたし、彼女自身もまた、よく笑う朗らかな娘であった。募集の張り紙を見た時は、運命的なものさえ感じたほどだった。
「こんにちは、スマイルガールです!」
 耳を傾ける者もいなくなって久しいその言葉を、今日も繰り返す。
 プロンテラの街角――
 彼女がこの場所に立つようになって、もう数年が過ぎていた。
 かつては彼女の言葉に興味深く聞き入ってくれた街の人々も、今では彼女がそこにいることすら忘れてしまったかのように、足早に通り過ぎてゆく。
 ごく稀に声をかけてくる人がいても、殆どが人違いや、あるいは苦情といったものでしかない。
「なんだ、カプラじゃねえのかよ」
「邪魔なんだよなァ、こんな所に突っ立ってられちゃ」
 あからさまな苛立ちを顔に浮かべ、ぺっと唾を吐き捨てていく者もいる。
 無言で通り過ぎてゆく人々も、少なからず同じようなことを思っているのだろう。彼女に向けられる視線は、道端に転がる犬の糞を見る時のそれと等しかった。
 しかし、彼女は弱音すら吐かず、ただ笑顔で、人々の白い目に耐え続けた。みんなに笑顔を与えるには、まず自分が笑顔でなければならないと、そう信じていたからだった。その信念だけが、折れそうな彼女の心を支えていた。
 ある日の帰宅途中、彼女はふと、街角の窓ガラスに映った自分の姿に目を止めた。
 一瞬、目を疑った。これが本当に自分なのだろうかと思った。
 支給された時には真新しかった制服は、あちこちが綻び、薄汚れていた。肌は荒れ、頬はげっそりとこけて生気がなかった。そのくせ、顔だけは、まるでそれ以外の表情の作り方を忘れてしまったかのように、にっこりと笑みの形に歪んでいた。
 そういえば、と彼女は思った。最後に本当の笑顔を浮かべたのは、いったいいつのことだっただろうか?
 記憶を辿ってみたが、思い出せなかった。もうずっと長い間、心から笑うことなどなかったのだ。
 ふいに、胸が張り裂けそうな気がして、視界がぼやけた。
 泣くのかな、と思ったが、窓ガラスの中の自分は、相変わらず乾いた笑顔を浮かべたままだった。彼女は無理に泣き顔を作ってみようとしたが、笑顔が奇妙に変形しただけで、うまくいかなかった。
 瞳に溢れた涙が、重力に耐え切れず頬を伝い落ちた時も、窓ガラスの中の自分は歪な笑みを浮かべていた。彼女はその顔が、泣くこともできない自分を嘲笑っているような気がした。


 翌日の朝、彼女は初めて仕事に行きたくないと思った。それでも、体に染み付いた習慣というものは変わらなかった。彼女は結局いつものように薄汚れた制服に着替え、家を出た。
「こんにちは、スマイルガールです!」
 街角に立ち、無駄な呼びかけを繰り返す。顔だけは笑ったまま。
 彼女の目は虚ろで、声は心ここにあらずといった風であったが、その変化に気付く者などいるはずもなかった。街はいつもと同じように、せわしない日常を消化してゆく。
 ――ああ、なんだ、そうだったんだ。
 惰性だけで声を張り上げながら、彼女は思った。
 私がどうなろうと、何をしようと、誰も何も感じない。たとえ私がいなくなったって、彼らは気付きもしないだろう。いや、むしろ、せいせいしたと思うかもしれない。
「……あはは」
 彼女の喉が引き攣るように震え、唇から笑い声が洩れた。ふっと視界が滲み、彼女は視線を床に落した。
 その時、誰かが自分の前を通り過ぎる気配がした。
「あっ、こんにちは、スマイルガールです!」
 彼女は慌てて目を拭い、顔を上げてそう言った。
「あン、スマイルガールだぁ?」
 やって来たのは、男の二人組みだった。一目でそれと分るほどに泥酔していた。顔は紅潮し、足取りはおぼつかない。しかし、目だけはぎらぎらと嫌な光を放っている。
 堅気の目ではなかった。どんなに酒臭い息を吐きながらも、その身に染み込んだ暴力の匂いは無くならない。
 まともな人間なら、決して関わりあいたくないと思う人種である。しかし、その時の彼女は、そんな判断すらできないほどに弱りきっていた。
「おう、兄貴、こいつスマイルガールだってよ」
「へえ」
 兄貴と呼ばれた男は、口元を歪めて笑い、目を細めて彼女を見つめた。肉食の獣が、獲物を品定めするような目つきであった。だが、彼女はその目つきを、イベントへの興味だと思い込んでいた。
「えっと、トリスタン三世国王陛下の命により、明るいミッドガッツ王国を作るためのイベントがありましてですね、私はその中の『国民に笑顔を!』というサービスを担当させていただいております」
 久しぶりにやってきたお客に、彼女は弾けるような笑顔を浮かべ、早口でまくし立てた。
「へえ、国民に笑顔を、ねえ……」
「ちょうどいいや。どうにも最近、面白いことがなくってね」
「はいっ! このイベントをきっかけに、私だけではなく、みなさんが笑顔で生きていける世界を作りましょう!」
 彼女がそう言った時だった。いつの間にか彼女の両脇に移動していた二人の男が、いきなり両手首を握ってきた。
「きゃっ!?」
 彼女は思わず声をあげ、男たちの手を振り解こうとした。しかし、屈強な男二人に、女の細腕で敵うはずもない。彼女はバンザイをするように両腕を持ち上げる格好となった。
「な、何するんですか、放してください!」
「うるせえ!」
 弟分が怒鳴り、彼女の顔を空いた方の手で殴った。容赦のない力が込められていた。生温いものが鼻から溢れるのを彼女は感じた。痛みよりも、突然のことで何がなんだかわからなかった。
「おい、クソアマ。明るいミッドガッツを作るだと?」
 彼女は力なく頷いた。その髪がぐい、と引かれ、彼女は仰け反るように顔を上げた。
「そのくだらねえお題目のせいで、俺らがどんな目に遭ってるか分ってんのか? ええ?」
 言いながら、男は彼女の髪を掴んだ手を振り回した。ぶちぶちと頭髪が引き千切られ、彼女の口から悲鳴が洩れた。
 明るいミッドガッツ計画は、何もスマイルマスクを配布するだけのものではない。いや、むしろ、計画の大分部は、荒廃した国内の治安浄化にあるといってもよかった。その中で、彼らのような闇社会に生きる者たちは、真っ先に取り締まりの対象となった。
「国民に笑顔を、とか言ってたっけなァ、あんた」
 兄貴分の男が、舐めるような視線を彼女に這わせた。
「俺たちも国民なんでね。たっぷり笑えるショーを見せてもらおうじゃないか」
 言いながら、男は腰に提げたナイフを抜いた。白刃がぎらりと光り、彼女はひっと声をあげて身を硬くした。
「おっと、動くなよ。手元が狂っちまうだろ」
 男の手がすっと持ち上がり、ナイフの刃先が彼女の襟元に触れた。その刃が、少しずつ彼女の服を切り裂いてゆく。
 いつの間にか、騒ぎを聞きつけた人々が、三人の周りをぐるりと取り囲んでいた。しかし、誰一人として男たちを止めに入ろうとする者はいなかった。みな、関わりあいになるのを恐れているのである。
 いくら当局の取り締まりが強化されているとはいえ、闇社会を取り仕切る組織の力はまだ強い。彼らと諍いを起こせば、恐ろしい報復を受けるのは目に見えている。
「見物人もたくさん集まってきたじゃないか。さあ、路上ストリップショーの始まりだぜ」
 彼女はぎゅっと目を閉じた。男の手が一気に振りぬかれ、素肌が風に触れるのが感じられた。
 観衆のざわめきが彼女の耳に届いてきた。それは哀れみよりも、下品な好奇の声であった。
「へへえ、思ったよりもでけえ乳してるじゃねえか」
 弟分は舌なめずりして、下卑た笑い声をあげた。
「客の受けもいいようだぜ、なあ?」
「まったくだ。もっとサービスしてあげなくちゃな」
 言いながら、兄貴分の男は寝かせたナイフで剥き出しの乳房に触れた。冷たい金属の刺激に、彼女の意思とは関係なく、乳首が硬く尖っていく。
「いいねえ、そそる眺めだぜ。どら、こっちもきちんとお披露目しないとな」
「いやっ、やめてください……!」
 彼女の言葉に耳を貸そうともせず、男は下着ごとスカートを剥ぎ取った。三角の黒い茂みが露わになり、彼女は必死に両膝を合わせた。
「おいおい、そんなに脚を閉じてちゃ、よく見えないだろう?」
 男は苦笑いしながら手錠を取り出し、彼女の両手首を背中の後ろで固定した。
「おう、こいつのマン穴がみなさんによぉく見えるようにしてやりな」
 弟分は頷いて彼女の後ろにしゃがみこむと、膝の裏に手を回し、一気に彼女の体を抱え上げた。
「あっ……!」
 観衆の視線が一斉にそこに集まり、誰かがごくりと唾を飲む音が聞こえた。
 大きく開かれた脚の真ん中に、幾重にも折り重なった柔襞で形作られた肉の薔薇が咲いていた。その下の窄まった菊穴までも、余すところなく衆人環視の中にさらけ出されている。
「はは、まるで親がガキに小便させてるみてえな格好だなァ。ケツ穴までよォく見えるぜ」
 男はげらげらと笑い、腰に提げていた酒瓶をあおった。口元から、溢れた酒がぽたぽたと地面に落ちる。
「ぷはっ……とォ、どうせなら、もっとよく見えるようにしてやらねえとなァ」
 口元を拭い、男は残った酒を彼女の股間に浴びせた。再びナイフを構え、脚の間にしゃがみこむ。
「ひっ! な、何を……」
「さあて、ストリップショーの次は、公開剃毛ショーのお時間だぜ」
 男は笑いながら、ナイフの刃で彼女の陰毛を剃り始めた。安酒に濡れた茂みが、じょりじょりと音を立てて剃り落されていく。
「やっ……ぁ、やめっ……!」
「っとォ、動くなって。クリ豆も一緒に削ぎ落しちまうかも知れねぇぜ? あるいは、もう一つ穴が増えちまうかもなァ」
「ッ……!」
 彼女は唇を噛み、体を強張らせた。
「そうそう、大人しくしてな……っと、よォし、できた」
 男は立ち上がり、綺麗に剃り上がった彼女の陰部を見下ろした。
「おほォ、こいつはいいや。見事なツルマンに仕上がったじゃねえか。ピンクのビラビラのひとつひとつまで、くっきりと見えらァな。おい、てめえも見てみろよ」
 彼女は恐る恐る目を開き、変わり果てた自らの局部を見やった。幼女のようにつるりとした肌の中に、熟した柘榴のような肉の割れ目が覗いていた。ひどくアンバランスなその眺めの向こうに、大勢の観衆がにやにやと下品な笑みを浮かべているのが見えた。
 ――あ。
 羞恥心と屈辱感で狂いそうになる意識の中で、ぞくん、と甘い疼きが彼女の体を疾り抜けた。
「おう、おう。マン穴がグチョグチョに濡れてよォ、絶景だぜ」
 男は再びしゃがみこみ、しげしげと彼女の秘肉を眺めた。
 もちろん彼女は濡らしてなどいなかった。彼女の秘部を濡らした液体は、男が浴びせた酒である。
 しかし男はそんなことを気にする素振りもなく、彼女のそこに指を突っ込み、無造作にかき回した。
 男を知らない体ではなかったが、彼女のそこはまだ異物を迎え入れることができるような状態ではなかった。
「ひぅっ! あ……ぁ!」
 全身を貫く痛みに、彼女の唇から、悲鳴にも似た声が洩れた。その声に、男が嗜虐的な笑みを浮かべる。
「いい声で鳴くじゃねえか。おら、もっと鳴いてみろよ!」
 ごつごつした男の指が、いっそう激しく彼女の中を動き回る。肉壷を濡らした酒が、クチャクチャと湿った音を立てた。
「あぁああっ! 痛っ……ぁ……やっ……やめっ…あぁあっ!」
 彼女は狂ったように手足をばたつかせた。だが、弟分に後ろから抱えられたままでは、ほんの些細な抵抗でしかなかった。
「へえ、そんなにやめて欲しいのか?」
 男が指を止めて訊ねた。彼女は苦痛で半ば朦朧としたまま、こくこくと首を上下に揺らした。
「そうだなァ……」
 男は膣穴に指を突っ込んだまま、しげしげと彼女の肢体を眺めた。その顔が、悪戯を思いついた小童のように、にんまりと歪んだ。
「ひとつ、条件がある」
「じょう……けん?」
「ああ。おめえ、このまま、ここで小便して見せな」
「なっ……!? そん、なのっ……」
「別に難しいこたァねえだろう? いつも便所でしてるみてえに、ここから垂れ流しゃいいんだ」
 言いながら、男は指先で彼女の尿道口を小突いた。
「んっ……!」
「できねえってんなら別にいいんだぜ。このままてめえのマン穴を存分にかき回してやるからよ」
「それはっ……」
 さっきまでの痛みを思い出したのか、彼女はぶんぶんと首を振った。
「じゃあ決まりだな」
 ぬぷん、と男は彼女の中に差し込んでいた指を抜き取り、立ち上がった。
「さあ、お次は路上放尿ショーだぜ。せいぜい勢いよく飛ばして楽しませてくれよ」
「う……ぅ」
 だが、突然小便しろと言われて、すぐに出せるものでもない。彼女はなんとか尿道口を緩めようとしたが、体がぷるぷる小さく震えるばかりで、雫の一滴も溢れてはこなかった。言うとおりにしなければ酷い目に遭わされると分ってはいても、やはり無意識のうちにブレーキがかかってしまうのである。
「どうした、さっさとしねぇか。客を待たせるモンじゃねえぜ」
 男が苛立った声で言った。
 ――客?
 彼女は顔をあげ、虚ろな目を周囲に向けた。無数の観衆が、口元ににやにやと笑みを浮かべながら、彼女の股間に視線を注いでいた。目をそらしている者は、誰一人としていない。その場にいる全ての者の視線が、彼女だけに向けられている。
 ――あ。
 ぞくん、と。
 先ほど感じたあの甘い疼きが、再び彼女の中を駆け巡った。
 みんながわたしを見ている。
 ずっと、誰も、見向きもしなかったわたしのことを、みんなが見つめている。
 笑いながら――。
 そう思った瞬間だった。大きく開かれた彼女の脚の間から、ぷしゃあっと勢いよく黄金色の液体が迸り、宙に放物線を描いた。
「おお、ホントにしやがったぜ!」
 彼女の体を抱えていた弟分が、大声で笑いながら腕を揺らした。飛び散る雫がきらきらと陽光に輝き、広場の石床を濡らしていく。
「ははっ! こりゃあ見事な噴水だなァ!」
 笑い声は、周囲を取り囲んだ観衆からも洩れていた。彼女は呆けたように尿を垂れ流しながら、夢現の中でその声を聞いていた。
 ――ああ、なぁんだ。
 朦朧とした意識の片隅で、彼女は、ふと思った。
 みんなが笑ってる。
 笑顔でわたしを見てる。
 わたしが、ずぅっと、ずぅっと、願っていたもの。
 願って、願って、でも叶わなかったもの。
 もう届かないと思ってた。
 みんなが笑顔になれますように――なぁんて、そんなのは所詮、子供じみた夢でしかなかったと、そう思いかけてたのに。
 その夢が今、ここに叶った。
「――あれ、兄貴ィ」
 彼女の肩越しに首を突き出していた弟分が、ふと何かに気付いたように声をあげた。
「あン、どうした?」
「このアマ、笑ってやがるぜ」
 弟分の言うとおりであった。この狂った宴の中、彼女の唇は、薄っすらと笑みの形に歪んでいた。
「ほォオ、こりゃ面白え。ションベン垂れ流すとこ見られて嬉しいのかよ。とんでもねえ変態だなァ、こいつはよ」
 兄貴分の男は、げらげらと笑い声をあげた。
「……あははっ」
 つられて、彼女の口からも笑い声が洩れた。彼女が長い間ずっと浮かべ続けてきた、偽りの笑いではなかった。本当に、心の底から、彼女は笑っていた。
「あは、あはは、あははははは!」
 彼女の笑い声は、堰を切ったように溢れ続けた。そのあまりの笑いように、さすがの男も、妙だと気付いたらしい。
「おい、こりゃあ、マジでイカれちまったか?」
 ――狂ってる? 誰が?
 彼女は、焦点の合わない目で、男を見上げた。
 それって、もしかして、わたしのこと?
 ううん、狂ってなんかいるものですか。わたしは本当に嬉しいの。だってみんなが笑顔でわたしを見てるもの。みんなが笑顔だとわたしも嬉しいの。ほら、こんなに笑ってわらってワラッテ――
「あははははははは!」
 とりとめなく渦巻く彼女の思考は、言葉にはならなかった。代わりに、乾いた笑い声だけが、その唇から溢れ出していく。
「まァいいか。頭のネジがブッ飛んでようが、穴の具合にゃ関係ねえだろう」
 言いながら、男はズボンのチャックを下ろした。そこから、硬く反り返った肉棒が、びぃんと弾かれたように飛び出した。
「兄貴、やっちまうんですかい?」
「当たり前じゃねえか。こうなっちゃあ、一発抜かねえことにゃおさまりがつかねえ。おめえだって、ギンギンにおっ起ててんだろうがよ」
 男の言うように、弟分のペニスははちきれんばかりに膨らみ、ズボンの前を押し上げていた。
「どうせなら、いっぺんにやっちまうか。前の穴にゃ俺が突っ込むからよ、おめえはケツ使え」
 男は彼女の両脚を脇に抱えるようにして、その間に体を割り込ませた。先端が花弁の中心を捉え、そのまま一息に貫いた。
「ひぎっ! あはっ……あぁあっ!」
 笑い声と苦痛の呻きが混じり合い、奇妙な叫び声となって彼女の口から洩れた。
「ははは、キツキツだなァ」
 男はそのまま腰を使い始めた。肉棒がごりごりと膣肉を抉り、安酒と小便、そして血の混じった液体が、クチャクチャと音を立てる。
「おら、てめえも突っ込みてえんだろ?」
 男は彼女の尻に手を回し、ぐいっと抱き起こしながら左右に開いた。白い尻肉の中に、薄茶の小さな窄みが覗いた。弟分は居ても立ってもいられないという風にペニスを取り出し、入り口に押し当てた。
 めりめりと裂けるような手ごたえと共に、巨大な肉の凶器が、彼女の中に潜り込んだ。
「あふぁあああっ! つぅっ……ぁ……!」
 彼女の体がガクガクと激しく震え、絶叫が唇から迸った。
「おっ……ほォ、すげぇ反応だなァ。こっちもキュウキュウ締め付けてきやがるぜ」
 二人の男は、彼女を抱えていた腕を離した。体重が二つの穴にかかり、肉棒がさらに深くめり込んでいく。
「おお、すげぇなァ。両穴のチンポだけで宙に浮いてるぜ」
 男は楽しそうに笑い、ゆさゆさと彼女の体を揺すった。
「ひぁっ、ひぁっ、あはははっ、あひぁああ!」
「ははっ、まだ笑ってやがる。チンポ二本突っ込まれて嬉しいってか? とんでもねえド淫乱だあァ、このアマは。どら、もっとヒイヒイ言わせてやるよ」
 言いながら、男は抽送を再開した。弟分も、下から突き上げるように彼女のアヌスを抉りこむ。二本のペニスが容赦なく彼女の中を往復し、ごりごりと擦れあった。
「あひぅ! ひぐっ……つぅ! んぁああっ! あはっ、あははは!」
 彼女の絶叫は、もはや獣の咆え声のようであった。周囲の男たちは、生唾を飲みながら彼女の痴態に見入っていた。自分が犯している気分になっているのか、ズボンをパンパンに膨らませている者もいる。
「ふぁあっ……んく! あっ、あぁあ、あはっ……ぁ!」
 二人に嬲りものにされながら、彼女はそれでも笑い続けていた。
 みんなが見ている。
 みんなが笑っている。
 こいつらに犯されるわたしを見て、みぃんな笑顔でわたしを見てる。
 嬉しいな。
 嬉しいな。
「ひぁはははは! あははっ、あははははぁっ……あぁあんっ!」
「つっ……おォ、兄貴っ、俺……もぅ」
「あぁっ、たっぷり中に出してやんな。俺もイクぜ……くっ!」
 二人の動きが激しさを増した。グチャグチャと肉穴を混ぜる音が大きくなり、荒い吐息が男たちの口から洩れ出していく。
「よォオオしッ……、フィナーレは公開中出し孕ませショーと行こうじゃねぇか!」
 そう言って、男はずぶぅううっと深く彼女の膣穴に自らを沈み込ませ、びゅるるるっと精液を吐き出した。
「あぁああっ……ふぁあああっ……あはっ…あはぁああっ!」
「くっ……ぉおおおお!」
 同時に、弟分も彼女の尻穴にたっぷりと白い樹液を注ぎ込んでいた。びくんびくん脈打つ二つのペニスから、ドクドクと叩きつけるようにザーメンが迸り、彼女の中を満たしていく。
「あひっ、あひっ、ひぁぁぁ……!」
 絶叫と共に彼女の目がぐるんと裏返り、白目を剥いた。手足ががくがく痙攣し、肉棒を咥え込んだ二つの穴が、独立した生き物のようにヒクヒクとうねり、男たちのものを締め上げていく。
「ははっ……どうだァ、しっかり孕めそうか?」
 最後の一滴まで残さず注ぎ込み、男はげらげらと笑い声をあげた。
 その時だった。
「おいッ、貴様ら、何をしているッ!?」
 駆け寄ってくる複数の足音と共に、鋭い叫び声が聞こえた。観衆の視線が、一斉に声の方に向いた。
「ちっ、憲兵が来やがったか。おい、ずらかるぜ」
 二人の男は、まだ痙攣している彼女の体からずるりとペニスを抜き取ると、素早く声と反対の方向へ逃げ去った。周囲に集まっていた観衆も、蜘蛛の子を散らすように、次々と立ち去っていく。
 広場に残ったのは、数人の憲兵と、全裸のまま横たわる彼女だけであった。
「君、大丈夫か?」
 憲兵の一人が、彼女に上着を被せ、そっと抱き起こした。彼女は焦点の合わない目で、その憲兵の顔を見上げた。
「もう心配ない。すぐに、救護のプリースト達も駆けつけるはずだ」
 彼女はこくんと頷き、そのまま目を閉じた。
「おい、どうした?」
 その様子を見た他の憲兵が、心配そうな声をあげた。
「大丈夫、気を失っただけです。我々の姿を見て安心したのでしょう。ほら――」
 そう言って、憲兵は彼女の顔を指し示した。
 彼女は、笑っていた。


   epilogue


「こんにちは、スマイルガールです!」
 いつものように街角に立ち、もう何度繰り返したか分らない呼びかけを繰り返す。
 相変わらず、立ち止まる人はいない。
 だが、彼女は確かに感じていた。通り過ぎる人々が、ちらりと好色な視線を彼女に走らせていくことを。
 ああ――
 甘い疼きに、彼女の体がぞくんと震える。
 みんなが、わたしを待っている。わたしに期待している。
 なんという悦び。
 もう悩む必要はない。わたしは見つけたのだ。みんなが笑顔になれる方法を。
「……あはは」
 彼女は笑いながら、そっと服のボタンに手をかけた。